監督 中村高寛さん
Vol.18
映画「ヨコハマメリー」
監督 中村高寛さん(31歳)
メリーさんとかかわった人々の
“人生賛歌”を感じてほしい
 現在公開中の「ヨコハマメリー」は、戦後50年間、娼婦として街に立ち続けた“ハマのメリーさん”を題材にした映画。監督の中村高寛さんに、作品に込められた世界観など熱い思いを語ってもらいました。
プロフィル1975年生まれ。横浜出身。97年、演出助手として松竹大船撮影所からキャリアをスタート。前田陽一監督の現場をはじめ、オリジナルビデオなどのドラマ作品に携わる。99年から01年まで北京電影学院に在学し、映画演出、ドキュメンタリー理論を学ぶ。帰国後、日本在住の中国人映画監督である李纓に師事し、氏のドキュメンタリー映画「味」に助監督として参加。本作が監督デビュー作となる。
→ 映画館でハートフルな人々と出会って!
 かつて、ひとりの娼婦(しょうふ)がいた。彼女の名前は“ハマのメリー”。そんな意味深なコピーとともに映し出されるメリーさんの生写真…。のっけから思わず好奇心をくすぐられる「ヨコハマメリー」は、撮影開始から5年の歳月をかけて完成。出演者は、メリーさんと親交の深かったシャンソン歌手、故・永登元次郎さん、メリーさんを題材にした一人芝居「横浜ローザ」を演じた女優の五大路子さんほか、クリーニング店や宝飾店、化粧品店、レストランなどメリーさんを客とし、また隣人とした店主など10数人。見どころは、彼ら一人ひとりの言葉がハマのメンタリティーをどう描き出すか。同じ女性としては、メリーさんの女性としての生き方にも深い感動が。
ヨコハマメリー
(c) 森日出夫 横浜ニューテアトル(伊勢佐木町2丁目、ピア隣)、テアトル新宿(新宿駅東口伊勢丹メンズ館隣、地下1階)で公開中
 中村さんがこの映画を撮るきっかけになったのは、1995年にメリーさんがこつぜんと姿を消したことでした。
 「中学生のころ伊勢佐木町へ映画を見に行くたびに見かけたのが、真っ白なドレスと化粧に身を包んだ老婆、メリーさんの姿。それがある時、久しぶりに行ってみるといない。故郷へ帰ったといううわさも流れる中、実際どこへ行ったのかと、個人的な興味が突如わいてきたのです」。一種の喪失感を埋めるべく調査に乗り出した中村さん。しかし、インタビューを重ねるうちに意外にも、メリーさんと親交のあった人々の生き方に強く引かれていったのだとか。
 「戦後、横浜が最も横浜らしく輝いた時代が彼らの中に今なお息づいていた。例えば、外国人居留地があった関内に対して、一般の日本人が生活した場所は関外と呼ばれていて、“ハマっ子”たちは今も『私たちは関外』と言い切る。人間が本来持つパワーを教えてくれたメリーさんの生き方と呼応するように、“横浜”にこだわって生きてきた彼らの人生も深い味わいに彩られていたんです。この人たちを撮りたい、この人たちを追えば横浜のメンタリティーを描くことができる、と強く思いましたね。だからこの映画はある意味、メリーさんとかかわった人々の“人生賛歌”でもあるんです」
ディープな町を支えるのはディープな人々
 深夜に及ぶ映像の仕事のほとんどが東京で行われるにもかかわらず、故郷である横浜を離れようとしない中村さんにとって、横浜はまさに「人生の縮図が存在する面白い町」。「ヨコハマメリーの舞台は富裕層が住む山手でもなく観光地のみなとみらいでもない。その対極にある、ディープな人々に支えられたディープな町です。その世界観を感じながら伊勢佐木町を歩けば、きっと今までの風景とは違った見え方をしてくるはず。ぜひ体験してみてください」
中村さんの
おすすめ
行きつけスポット
 横浜の町に並々ならぬ愛着とこだわりを持つ中村さんはかなりのグルメ。数々の候補の中から人情味あふれる3店をピックアップしてくれました。あなたもリピーターになってみては?
濱新
“なかめし”は横浜折衷文化の象徴 濱新
 昭和4年創業のふぐとうなぎの店。3代目・山菅浩一郎さんは横浜の伝統ある食を今に残したいと、数々の文献を参考に「ペリー饗応の膳(全15品)」を再現したことで有名。また、横浜ならではの創作料理にも余念がありません。写真の「なかめし(お吸い物・おしんこ付き)」1300円は、そんな山菅さんの第一号の傑作。横浜の折衷文化を象徴するかのように、うなぎの和、オムレツの洋、甘酢餡の中が口の中で絶妙なハーモニーを奏でます。忘れられない味とはこのこと。ご賞味あれ。
住所 横浜市中区吉田町3ノ1
営業時間 午前11時30分〜午後2時30分、午後4時30分〜10時。日曜定休
TEL 045(251)0039
三陽
野毛名物はしゃれと真心がたっぷり 三陽
 野毛の町のわいざつな雰囲気を味わうならココ。おやじの店?と思うなかれ。メニューにはちゃんと女性用として、“楊貴妃も腰を抜かすギャルのアイドル「チンチン麺」”700円なるものが用意されているのですから。にんにくとニラがたっぷりで、塩味のスープはコクがあるのにさっぱり。最後の一滴までおいしく食べられます。「コラーゲンと真心がうまさの秘密」と店主。名物の餃子400円も忘れず注文してね。
住所 横浜市中区野毛町1ノ38
営業時間 午前11時〜翌午前0時(日曜、祝日は午後11時まで)。※木曜のみ夕方から営業。無休
TEL 045(231)0943
天丼 豊野
店主の味わいも天下一品! 天丼 豊野
 横浜中央卸市場で魚の仲買人をしていたという店主。その関係で、“いつも新鮮な旬の魚が食べられる”と評判の店。野菜は地場のものを中心に13〜15品がそろいます。中村さんが「おやじさんがいい味出している」というように、おいしさのつぼを押さえた天丼とともに、店主の軽妙な語り口とあたたかな人柄も魅力。カウンター席のみの親密な空間で「ご飯少な目」にも気軽に応じてくれますよ。写真は天丼600円。
住所 横浜市南区真金町2〜18
営業時間 午前11時〜午後3時、午後5時〜9時。日曜定休
TEL 045(251)4740
映画「ヨコハマメリー」監督 中村高寛さん濱新三陽天丼 豊野
情報掲載日:2006.4/19
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