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考えるための技術を
哲学者の「格言」に学ぶ

 「哲学は考えるための技術。決して、なぞめいていたり、高尚な言葉が書かれているものではないんです」と話すのは、今回の特集のナビゲーター役である哲学者の竹田青嗣さん。
 中でも、哲学者の「格言」には、考え方の原理が詰まっているといいます。そこで今回の特集では、著名な哲学者の「格言」をひもときながら、考えるための技術を学んでいきます。また、難しそうな哲学の世界をより楽しく理解できるよう、「最近、哲学のことがなぜか気になる」という漫画家の藤野美奈子さんに質問&聞き役をお願い。藤野さんと一緒に、哲学の世界をのぞいてみましょう。
ようこそ哲学の世界へ

「そもそも哲学って何なの?」

困ったときに役立つ思考の原理
藤野 いろいろなことでよく悩むんですが、その度に、占いは頼りない、宗教はちょっと怖い、おばあちゃんの知恵袋も今ひとつ(笑)って感じるんです。その答えが哲学にあるような気がして…。
竹田 占いや宗教は、古くから伝わる立派な人たちのよい知恵に、思い切って信頼して任せようとする考え方。それで満足できる人はもちろんそれでOK。ただ、困難な問題にぶつかったとき、自分できちんと考えて納得したいという人には、哲学が向いていると思います。
藤野 そう、ちゃんと自分で考えてみたいんです。でも、哲学書って難しい呪文のような言葉がいっぱい書かれているじゃないですか。もうちょっとわかりやすく説明してほしいんです。明日からすぐ使えるように、です! いえ、できたら今日、たった今から!
竹田 あ、はい…。では、ひとつ、哲学者の格言を考えてみましょう。たとえば、キルケゴールの言葉、「気絶した人には、オーデコロンが効く。でも絶望しかけている人がいたら、可能性をもってこい」。これ、ちょっと核心をついていると思いません?
藤野 自信を持ってピンときません! いきなり深みにはまっちゃった。やっぱり難しいじゃないですかー!
竹田 まあまあ、焦らずに。キルケゴールは、人間は要するに「可能性の連続によって生きている」と言った哲学者。この格言は、人間は絶望したとき「やけっぱちになる」「死ぬ」「ほかの可能性を探す」の3つしか選択肢がない。で、もしこの3つ以外にはないということが十分腑(ふ)に落ちたら、人間は必ず可能性を探す、という原理を示したものなんです。
藤野 絶望したときの選択肢って、たったの3つポッキリなの!? しかも「可能性」しかいいの残ってないじゃないの〜。哲学って、最初にズバリ結論を言っちゃうのね。
竹田 そう。この3つ、この2つしかありません、ってハッキリ言っちゃう。でも、それは神のお告げなどではなくて、哲学者たちがリレーしながら突き詰めて考えて出した答えなんです。人間、よーく考えれば、これについてはどうしてもこう考えるしかない、という道だけ探して進む。だから、哲学は、誰にでも使える思考の原理を示すものなんですね。たとえば、藤野さんが考えると、この結論に至るまでに何十年もかかるかもしれないけれど、哲学者の格言はすぐそれにちゃんと答えてくれる。
藤野 そうね、私の場合は何十年もコツコツ…って、失礼じゃないですか! そういう竹田先生は何年かかって原理に至ったんです?
竹田 うーむ、それは…。
藤野 時間かかってますけど(笑)。
 困ったときに役立つ“思考の原理”だという哲学。そこで、読者が日常生活で抱えている悩みをピックアップ。哲学者の格言に学びながら、問題を乗り越える方法を考えてみます。「竹田先生、私も日々あれこれと悩んでいるのでズバッと教えてください!」(藤野)
大嫌いな上司がいます。仕事でミスをしたわけでもないのに、気分屋で機嫌が悪いとすぐどなり散らすんです…
もっと仕事で自分の能力を発揮したい。でも今の部署の仕事内容は自分のやりたいことではなくて…
なかなか本当に好きな人に出会えません。このままだと将来結婚できるのかどうか心配です
最近、仕事もプライベートも楽しくありません。このままではいけないとは思っているのですが…
もっと考えたい人のために哲学入門書案内
2005.10/19更新
「気絶した人には、オーデコロンが効く。でも絶望しかけている人がいたら、可能性をもってこい」
(キルケゴール「死にいたる病」)
※キルケゴール(1813ー1855) デンマークの思想家。キリスト教を鋭く批判し、現在の実存哲学・弁証法神学に大きな影響を与える。著書に「死にいたる病」「不安の概念」など
人間は絶望したとき、「やけっぱちになる」「死ぬ」「ほかの可能性を探す」の3つしか選択肢がないんです (竹田)
藤野美奈子(ふじの・みなこ)さん
漫画家。通称“みなっち”。OL経験もあり。当時シティリビングの愛読者。日常生活で見過ごしてしまいそうな小さなこともしっかりと見つめていく、するどい観察眼と独特のコメディセンスが人気。「友子の場合」「気休め言葉館」(いずれも小学館)、「レンジで五分」「新婚合宿」「大人の失恋反省会」(いずれもメディアファクトリー)、「不美人論」(西研共著、径書房)など著書多数
竹田青嗣(たけだ・せいじ)さん
哲学者、文芸評論家。早稲田大学国際教養学部教授。大学だけでなく、朝日カルチャーセンター(新宿)の講師を務めるなど、より深く人生を味わうための哲学の思考技術を幅広い層に教えている。「自分を知るための哲学入門」(ちくま学芸文庫)、「ニーチェ入門」「プラトン入門」(いずれもちくま新書)、「現象学入門」(NHKブックス)などの哲学入門書をはじめ、著書多数
■カイシャの小羊
■大谷由里子のコーチング
■恋愛道研究所