「世界でいちばん淋しい遊園地」は、懐かしさと寂しさを思い出させてくれる。舞台は78年の歴史に幕を閉じようとしている遊園地。「思い出がつまった、記憶の玉手箱のような遊園地に対する“ありがとう”という気持ちを小説の中にとどめておきたかった」と西田俊也さん。誰もが一度は行ったことのある遊園地という場所だからこそ、さまざまな郷愁をかきたてられる。「過去に対して後ろ向きなイメージを持つ人が多いけれど、過去を思い出し、向き合うことで現在・未来があるというふうに考えた方がいいな、と」
登場する人物は皆、過去の楽しかったころの記憶を遊園地という場所で思い起こし、現在の自分に区切りをつけようとしている。「出来事や場所など、何かをキッカケに昔のことを思い出すのは男女とも同じ。ただ男性は過去を美化してしまいがちだけれど、女性は生々しく覚えているのは大きな違いです」。過去と向き合い、自分が何をしてきて、どんなことを考えてきたのかを知った上で、新たな思い出をつくる。そうすることで、どんどん前に進み、男女問わず人として磨かれていくのではと西田さんは言います。向き合うことを避けていた過去を振り返り、今までの思い出をこれからの思い出に“更新”することで、未来への希望を見つける登場人物たち。「思い出にひたるということはとても甘美な行為だから、封印することではないんです。思い出を振り返っている部分も含めて、現在であり、そこから続いていくのだから」
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