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コミュニケーションキーワード:価値観
「“勝ち組”という価値観が絶対でなくなるのが“楽園”の世界」

 「アルカロイド・ラヴァーズ」は、人間が植物として存在する“楽園”で自由な恋愛を楽しんでいたが、おきてを破ったことで現世に追放された女性・咲子が主人公。「人間に比べて早いサイクルで生きている植物をなぜ題材にしようと思ったのですか?」とシティ読者の竹下雅美さん。星野智幸さんは「植物と人間は違う感覚で生きている。“楽園”という場所では、いろいろな人が入り乱れ、恋愛をし、やがて死が訪れる。そして、骨から芽が出て、自ら生まれ直すのが常識の世界。妻と夫という一対一による命の誕生とは違う、別の生殖の形を植物を通して書きたかった」のだそう。私たちの日常とはかけ離れた世界の話と思いがちだが、テーマは結婚や出産といった女性の生き方! そして複数人との恋愛も当たり前の“楽園”で、一人の人間の愛情を独占しようとして追放された咲子は、結婚して子どもを持つという“罰”を受けるため現世に現れる。

 「世間では、結婚して子どもを持つことがある種の“勝ち組”とされているけれど、そうでない人は本当に負けなのかと思って。負けと言われている人からすれば、結婚して子を持たされている“勝ち組”こそ、罰を受けているという考え方もできるんです」

 現世でさまざまな男性と恋愛をした咲子だが、最終的には公務員である陽一を伴侶として選ぶ。現代社会に違和感を持った陽一と、自由な恋愛をあきらめた咲子は出会うべくして出会ったと星野さんは言います。「二人は生きづらいという感覚のズレが一致しているので一緒にいられる。たぶんほかの相手ではダメですね。一度、女性の幸せと考えられているような既存の価値観をぬぐい去り、冷静に見つめ直すことで、自分に合った相手との幸せを見つけられるのかもしれません」

2005.3/9更新
星野智幸さん
「アルカロイド・ラヴァーズ」
星野智幸さん
1966年アメリカ・ロサンゼルス生まれ。1997年「最後の吐息」(河出書房新社)で文藝賞、2000年「目覚めよと人魚は歌う」(新潮社)で三島由紀夫賞、2003年「ファンタジスタ」(集英社)で野間文芸新人賞を受賞。ほかの著書に「毒身温泉」(講談社)、「ロンリー・ハーツ・キラー」(中央公論新社)など
シティ読者の竹下雅美さん
「過去である楽園、現在である現世、そして未来という3つの時間軸が不思議に溶け合っているのが印象的でした」とシティ読者の竹下雅美さん(27歳/保険)
アルカロイド・ラヴァーズ「アルカロイド・ラヴァーズ」
新潮社、1470円
 咲子はかつて人間が植物として存在し、何度も生まれ直しては恋を繰り返すことが常識の“楽園”の住人だった。しかし裏切りを働いたため、この世へと追放される。そして区役所勤めの陽一と結婚するが、彼女はなぜか猛毒アルカロイドを彼に与え始める。