「カメラが回ると、ついイタズラをして周囲を笑わせたくなるの」と、おどけた表情をみせるペ・ドゥナ。「リンダ リンダ リンダ」では女子高生バンドに参加する韓国人留学生、「春の日のクマは好きですか?」では恋を夢見る女性など、コミカルな魅力を発揮してきた。だが、新作「グエムル−漢江の怪物−」では一変。ソウル市を流れる大河、漢江(ハンガン)に突如現れた正体不明の怪物に姪(めい)を奪われ、アーチェリー選手としての技を武器に戦う寡黙な叔母を演じる。
「スポーツはまるでダメな私が、アーチェリーの選手役だから、3カ月間も猛特訓。的を自宅にも買って練習したから、最後には50m離れた距離で的に当てられるぐらいになりました。ただ、撮影が終わるころには本物の選手みたいに肩に筋肉がついて…。監督に“どこの世界に肩がたくましくなるまで頑張る女優がいるの?”と言われてしまいました」
本作の監督、ポン・ジュノはペ・ドゥナ主演の「ほえる犬は噛まない」で監督デビューをした後、前作の「殺人の追憶」を大ヒットさせて、韓国映画界が期待を寄せる気鋭の人だ。
「出演を決めたのは監督を信頼したからなんです。だってこの作品は“高校時代に漢江で怪物を見た!?”という監督のアイデアから生まれてる(笑)。だから、とてもとっぴな話。確かに怪物は出てくるけれど、描かれているのは家族愛なんです。で、撮影初日に、“昔と違って、なんだか大物のニオイがしますね”って、監督に冗談めかして言ったんです」
撮影中には下水道に入ったり、全身泥まみれにされたり、苦労も多かった。しかも、撮影現場にはいない怪物を相手に戦う演技をするため、映画「キング・コング」のメイキング映像を見て、心構えまでしていた。
「でも、何もいないと演技しづらいだろうということで、撮影では真っ黒なダイビングスーツを着たスタッフが怪物役になったんです。それがおかしくて、NGも連発しちゃうほど。大変だったけど、楽しかった」
本作は今年のカンヌ映画祭で絶賛され、欧米や日本、中国など世界22カ国で公開される。ポン・ジュノ監督に「“いい女優になった”と言われた」と喜んでいたペ・ドゥナ自身が、世界中の注目を集める日も近い。
(映画ライター 前田かおり) |