“鳥も通わぬ”とうたわれた絶海の「八丈島」に、島流しの刑に処された流人たちの姿を描いた映画「るにん」。愛する女性のため、命がけで“抜け船”に挑む役を、奥行きのある演技でこなしたバレエダンサー西島千博さん。
「撮影中はケガだらけでした。ふんどし1枚で水深5mの海に素潜りしてダイバーさんに“やりすぎ”と注意されたり、がけっぷちの波打ち際で水に流されてははい上がったり、今思えば限界を超えていたなと思います。でも役に入っているときって、不思議と恐怖心がわかないんですよね」
そんな体を張った演技とともに、怒りや切なさを微細な表情の変化で見事に演じ切った今作。バレエと映画の演じ方の違いは? 「バレエの演技では、様式や技術に注目する人が多いけれど、僕は“感情表現”を大切にしたい。だから、細かい心の動きを考えて演じる点は映画も同じです。ただ、セリフと一緒に体が動いてしまい、“動くな!”と何度も注意を受けて苦労しました」
憧れはチャプリンのようなアーティスト。「彼の映画は、無声映画なのに表情や体の動きで喜怒哀楽が感情豊かに表現されていて、ストーリーにも夢がありますよね。いつかチャプリンの役を演じてみたいです。ダンサーである自分にしかできない動きを表現したい」と目を輝かせる。劇中で見せるストイックでクールな印象とは裏腹な、こちらが和んでしまうほどおおらかな笑顔。
また、取材中に“自然でいたい”という言葉を。夜中にときどき、六本木のCDショップや書店、インターナショナルマーケットにフラッと出かけることも。「あれこれ見ているうちに、スーパーに1時間いたりします(笑)。適当に買ってきた野菜をバーッと切って、スープとかよく作りますね」
バレエのレッスンは根を詰め過ぎず、体が休みたいといっているときは休むそう。「全然ストイックじゃないんです」と言うが、限界に挑む演技はまさにストイック。バレエで培ってきたプロの精神なのだろう。 |