曲がったことは許さず、一途な情にはもろく、心意気を大事にする男。そんな役が、これほどハマる人はほかにいない哀川翔さん。映画「鳶(とび)がクルリと」ではその魅力をいかんなく発揮、女心もくすぐってくれる。
物語は、エリートOL・貴奈子(観月ありさ)と鳶職人・悦治との異業種格闘コメディー。一見、正反対にいる両者がガチンコ勝負するうちに、見えてくる大事な何か。
「仕事でいくら商売ガタキを見返すチャンスでも、自分の思っていることはそう簡単に譲れないという、悦治の“筋道”はよく分かる。それとやっぱり“真剣な思い”にはオレも弱いね。オレ自身、仕事を引き受けるときに、簡単には引き下がらないしつこいくらいの作り手の真剣な思いが伝わってくると、そこに参加したくなるし、それが受けるときの一番の決め手だから」
日ごろOLと接することがない哀川さんにとって、貴奈子のような女性はとても新鮮で「俺にとっては、“格闘映画”ではなく、“恋愛映画”でした(笑)」。体当たりで仕事にぶつかる貴奈子にどこか心ひかれる悦治だが、いつも会話がズレまくる、恋の迷走ぶりがおもしろい。
「貴奈子は計算高くない無頓着さがいいのよ、コワいもの知らずというか。でもある種“できる人”っていうのは、物事に対する先回りができると思うわけ。仕事って、いかに次の段取りが頭の中でできているかどうかが最大のポイントになるよね。だけど半面、無防備さとかがむしゃらさとかが最大の魅力になる。コケようと何しようと一生懸命進んでいる姿は美しいと思うよ。きれいにうまく進みすぎちゃってる人よりも、がむしゃらで足がもつれてるような人の方が人間ぽくて好きだな。愛される人っていうのは、そういう人じゃないかな?」
俳優としてだけでなく、父親としての存在感も圧倒的で、息子さんからは「こんな怖い大人見たことない」と恐れられているそうだ。
「オレは子供の友達にも怒りますから。この前も“こんにちは”“ありがとうございます”の最低限のあいさつだけはちゃんとしろ、と暴れまして(笑)。その後はその子もちゃんとするようになりましたよ。この映画の宇津井健さんみたいなおおらかなお父さんもいいけど、年取ったら、ちゃぶ台をひっくり返すようなカミナリ親父になりたい。もうすでに半分なっているので、わが家は家具が固定されちゃってるけどね(笑)」 |