全国区で愛され、数々のアーティストに多大な影響を与える沖縄の音楽。知名定男は、今日までの流れを引っ張ってきた貢献者の1人であり、沖縄民謡<=島唄(しまうた)>界を代表する唄い手。師弟共演で話題になった登川誠仁(映画「ナビィの恋」のオジイ役)と制作したアルバムを経て、6月29日、14年ぶりのソロアルバム「うたまーい」をリリースした。
「昨年、師匠との共演がすごくうれしくて、歌い込みや走り込みで鍛えて、気合十分でレコーディングに挑んだんです。けれど師匠には、“何をリキんでいるの”とフワリとかわされて、意気込みを消化できずに終わった。そこで、心の中の勢いに踏ん切りをつけるためソロアルバムを作ることにしたんです」。コンセプトやテーマよりも“今歌いたいものを歌う”と製作し、わずか2時間強で全曲の歌入れが終了。「聞き返さなくても良かったのが分かるんです。こんなに気持ちよく歌えたのは初めて。デビュー48年目にして一番若々しくて天真爛漫(らんまん)な歌声なんです(笑)。こんな年齢でもまだ進化できるのかな。このアルバムが生まれたことで、まだまだ自分が変わっていけるかもと期待しています」
現在60歳。わずか12歳でデビューした知名さんが島唄に本格的に心酔したのは、実はデビューから10年たったころだという。「小さいころは、うちなーんちゅ(沖縄出身者)ということで差別を受け、沖縄の歌が嫌いだった。変声期で声が出なくなったときは島唄を離れたし、戻ってヒット曲を出しても今とは姿勢が違った気がします。けれど、22歳のころにクラシックギターで島唄を弾いたときにハッとした。今までとは違う立ち位置から島唄を見て、初めてかっこよさに気づいたんです。そこから迷いはなくなった。島唄が僕のライフワークになり、人生の道になったんです」。その後、まだ一般的でなかったレゲエとの融合を試みたり、次々と新しい島唄を生み出してきた。「古いものの中から新しいものを生み出すというのが僕の方針。古い歌には長年歌われてきただけの要素がある。しかし、昔からあるものを守るだけでは、その音楽は時代に取り残されて死んでしまう。新しいものと組み合わせて蘇生(そせい)を繰り返すことで音楽は生き続けていくのだと思います」 |