取材時、テーブルに置いてあったマスコミ向けの撮影台本を「見てもいいですか?」と手に取り、中をそっと開いた吉岡秀隆さん。台本を見つめる穏やかなまなざしから、作品に対する愛情がうかがえる。
「四日間の奇蹟」は、事故で左手に傷を負い、ピアニストとしての将来を断念した吉岡さん演じる敬輔と、家族を失いながらも、療養センターで働きながら懸命に生きる女性・真理子(石田ゆり子さん)、心を閉ざしながらも天才的なピアノの才能を持つ少女・千織の3人を中心に織りなされる、やさしくも切ないファンタジック・ラブストーリー。
「この作品は、いい意味で“すき間”が多い作品だったんですよね。まず、どんな色で、どんな空気感を持って、どんなことを見る人に伝えたいかを、佐々部監督と僕のあいだで一致させて、それを大事にしました」 撮影し終えたシーンを、毎晩振り返っていたと言う吉岡さん。「そうすることで、台本上にはない心の動きを敬輔が答えてくれた。挫折した一人の男が作品の中で成長することができたかなと思います」
悩んだら、悩んだぶんだけ役が返してくれたのは、信頼する監督とスタッフがいる現場だったからこそだと言う。「監督が、役者の心の揺れを的確にとらえるんです。こうしてやろう、みたいなウソの芝居は見抜かれてしまうから、現場に行って感じたことを優先しました」
実際、ピアノを弾くシーンも監督の意向で吹き替えなし。アーティストの顔も持つ吉岡さんだが、本格的にピアノに触れたのは初めてだとか! 「ピアノを弾く芝居ができたということではなく、ピアノを一生懸命練習することで僕自身が敬輔の内面をのぞけたというか…。なんとなく敬輔が見えてきたことの方が大きかった」
日本映画界を担う俳優の一人と評される、吉岡さんの確かな演技力。でもその陰には、役に真正面から向き合う努力と、作品に対する真摯(しんし)で丁寧な姿勢があることを感じた。 |