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vol.65 もしもパワーハラスメントに遭遇したら… 2007.4/18 更新
“パワハラ”は会社全体の問題 ひとりで悩まず相談して

 パワーハラスメント(パワハラ)は、職権などの権力(パワー)を背景に、上司が部下に継続的に精神的・肉体的なダメージを与えること。大人社会のいじめともいえる“パワハラ”について、高梨和子さんに聞きました。(文/渡邊良子)

“これはパワハラ?”と思ったら
冷静になって記録をつけてみる

 「1回怒られたぐらいではパワハラとはいいません」と言うのは、社会保険労務士として、パワハラなどの労働相談を多く手がける高梨和子さん。「特に新入社員の方は、怒鳴られたり大声でしかられたりした経験が少ないので、ちょっと怒られただけでパワハラだと思って、相談にこられます。確かに、何度も同じことでしかられたり、人格を否定するようなことをしつこく言われたりしたら、パワハラの疑いがあるかもしれません。でも、ミスをした自分が悪い場合も。すぐにカッとなるのではなく、どうして怒られたのかを考えてみてほしいですね」

 パワハラの疑いがあると思ったら、まず記録をとること、と高梨さん。「パワハラを立証するには、第三者にもよく分かるよう、具体的に説明することが必要です。ただ、口で状況を再現するのは精神的にもきつい。ですから、日記に書く、レコーダーなどで録音する、メモ帳に書き留めるなど、記録に残すといいですね」。こうした記録は訴訟になった場合の証拠にも。また、書いた内容を後から見返すことで、自分を冷静に振り返ることもできそうです。

防止策は社内のコミュニケーション
相談できる上司や同僚を持って

 「終身雇用制が崩れ、能力主義が広がり、以前より社内のコミュニケーションがうまくいかなくなっているのでは」と高梨さんは言います。「例えば、しかるときだけしかって、褒めるべきときに褒めないという上司だと、部下のほうは“どんなに頑張っても正当に評価されない”と思って不満が募ってしまう。その結果、ちょっと怒られただけで“パワハラだ!”と受け止めてしまうのかもしれません。普段から上司と部下とのコミュニケーションをうまくとっておくことはとても大切だと思います」

 また、信頼できる人に相談してみることも必要だと高梨さん。「前にいた部署の上司や同僚などに話を聞いてもらうことで、客観的に状況が見えてくることもあります。パワハラは、長時間労働など何らかのストレスがある場合に起きることが非常に多いんです。自分自身だけで抱え込まないでください」

 また、もし周りでパワハラが起きていたら、見て見ぬふりをするのはダメと高梨さん。「パワハラを見聞きすることによって、周りの士気が下がってしまうことも。“パワハラ”は個人の問題ではなく、会社全体の問題ととらえることが大切だと思います」

社会保険労務士 高梨和子さん 社会保険労務士
高梨和子さん
経理・総務として企業で勤務後、ハローワークでの職業相談員を経て、2005年4月に社会保険労務士事務所を開業。ハローワーク就職活動支援セミナー講師も務める。
高梨社会保険労務士事務所
http://www.takanashi-
jimusho.com/
パワハラの相談窓口
「社内にコンプライアンスなどの相談窓口がない場合は、社外の相談機関を利用して。直接会社に働きかけてくれたり、弁護士が助言を行ってくれるところもあります」と高梨さん。相談は電話や面談で受け付け。夜間や休日に開いているところも。ホームページなどで調べてみて。
東京労働局 総合労働相談コーナー
http://www.roudoukyoku.go.jp/
advise/annai.html
東京都労働相談情報センター
(飯田橋、大崎、池袋、亀戸、国分寺、八王子)

http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/
soudan-c/center/index.html
高梨さんオススメのパワハラの参考書籍
「何をもって“パワハラ”というのか分からない」という人に、さまざまな事例などが分かる高梨さんオススメの書籍を紹介します。
※価格はすべて税込み
「上司殿! それは、パワハラです」
岡田康子著(日本経済新聞社、1470円)
「上司と部下の深いみぞ?パワーハラスメント完全理解」
岡田康子編著(紀伊國屋書店、1365円)
「パワーハラスメントなんでも相談」
金子雅臣著(日本評論社、1890円)
高梨さんが相談を受けたパワハラの事例
1

別室にひとりにして
しかったりののしったりを繰り返す

上司から、頻繁に言葉によるいじめを受けていたAさん。あるときから、上司はAさんに、みんなとは別の部屋でひとりで仕事をさせるようにしたんです。そして、Aさんが逃げられないようにして、怒鳴るということを繰り返しました。このように、ほかの人に見られない場所で、しかったりののしったりを繰り返すケースがあります。

2

“教える”という名目で後輩や部下に暴言をはく

Bさんは転職して受付の仕事をしています。その受付のベテランの方がBさんに仕事を教えてくれるのですが、ことあるごとに「あなたにはできないと思うけどね」「おぼえが悪いからあなたには無理ね」と言うそうなんです。“教える”“指導する”という名目で、暴言をはいたり、ひぼう中傷を続けたりするのは、明らかにパワハラといえます。

3

トップの対応によって集団でのいじめに

10人弱ぐらいの部署にいたCさん。何かのときに、その部署のトップの方が、ささいなことでCさんを怒ったそうです。すると、“トップがCさんをそう扱うんだから、Cさんはいじめてもいい存在なんだ”という空気が部内に流れてしまった。そして、Cさんは集団でいじめられるように。トップの対応がいかに大切か分かります。

高梨さんが相談を受けたパワハラの事例