今、伝えたいこと〜先輩からのメッセージ〜

第2回

音楽処 代表取締役
石川千鶴子さん 〜vol.2 Chizuko Ishikawa〜
 
 

人との出会いが原動力。乗り越えるべき壁は、必要だからこそある

PROFILE/1956 年生まれ。樺戸郡月形町出身。高校卒業後、「玉光 堂」に入社。2004 年に同社を退社し、翌年CD ショップ「音楽処」(www.ondoko.jp)をオープン。昨年と今年発売された、北海道のインディーズアーティストによるコンピレーションアルバム「オトキタ」のプロデューサーも務める。趣味は温泉巡り。座右の銘は「成せば成る、成さねば成らぬ、何事も」

 これほど店内ライブの多いミュージックショップはあるでしょうか。メジャー、インディーズを問わず、頻繁に店内ライブが行われる「音楽処」。同店の代表を務めるのが石川千鶴子さんです。
 高校卒業後、CDショップ「玉光堂」に入社。「音楽に憧れ、その側で働きたいと思って入社したけれど、覚える商品知識は膨大だし、自分の耳が頼りだし、甘くはなかった」と、入社当時を振り返ります。CDではなくレコードの時代。来店した人が有線やラジオで耳にした曲を口ずさみ、それを手掛かりにレコードを探すこともしばしば。「今以上に、自分の耳や感性が重要な時代だったかもしれません」と石川さん。少ない情報でお客さんの求める1枚を探し当て、喜ばれた時は心底うれしかったといいます。
 店員として経験を積んだ後、バイヤーに。自分が仕入れたものが売れる喜びを知ったり、後輩を育てる難しさを経験しながら、キャリアを積んでいきました。「玉光堂PALS 21」で邦楽マネージャーをしていた頃は、若いミュージシャンを中心に店内ライブの機会を数多く提供。年間200本ものライブを開いたことも。そのうちに石川さんを慕うアーティストが増えていきました。

人の思いが、大切な出会いをもたらしてくれる
 そうして30年勤めた同社を、「一度自分をリセットしたい」と3年前に退社。でも、ゆっくり先のことを考えた時に頭に浮かんだのは、それまで出会った多くの人たちの顔でした。「お客さんやアーティスト、みんなに支えられていたとあらためて実感。私は音楽を通して人とつながっていたんですね。CDを売ってはいたけれど、モノを売るだけじゃない。そこには作り手と聴く人の思いがある。私は両者の間に立っていたのだと思いました」。そして、応援したいアーティストを、より自由に応援できる店を開くことを決意。「音楽処」をオープンしました。
 その後は、石川さんが「この仕事の醍醐味(だいごみ)」と言う“音楽を通じた人との出会い”がますます増え、自身の出会いはもとより、お客さんとアーティスト、アーティスト同士といった、「音楽処」があるからこそ生まれた出会いもたくさん。「うちは“出会い系の店”と言われてるの(笑)」と冗談を言います。
 音楽業界は、ネット配信が当たり前となり、30年前に比べると厳しい時代。「だからこそ、この時代に店を3年続けられた意味は深いと思う」と胸を張ります。さらに、「会社勤めの30年より、この3年の方が何倍も濃い時間でした。大変だったけれど、私がしていることに、店のスタッフはじめ、お客さんやアーティストなど、多くの人が思いを重ねてくれる。とても素敵なことですよね。結局、一つの大切な出会いを作るのは、お金ではなく“人の思い”だと思う」とニッコリ。

どんなにつらい時も、自分は一人じゃない

写真
5月に移転した「4丁目プラザ」7階の店舗。
北海道のインディーズアーティストのCDも並んでいます

 とはいえ、経営者としては初心者。店を始めてからは苦労の連続でした。辞めたくなることはなかったのでしょうか。「毎日辞めたくなるかも(笑)。でも、壁は誰にでもあるもの。永遠にあるのかもしれない。時々それが厚くなったり、薄くなったりするんじゃないかな。そして、その壁は自分にとって必要なものだと思う。落ち込むことも必要。壁が見えないふりをしても意味がないでしょ。乗り越えてこそです」。困難も、自分に必要だと受け止める勇気が大切だということでしょう。壁を感じている人にアドバイスをお願いすると、「偉そうなことは言えないけど」と前置きをして、「“頑張れ”と言われるのがつらい時もある。でも、結局は自分が頑張るしかないんだよね。ただ、自分は一人じゃないと知ることは大切。私なら、店のスタッフやこれまで支えてくれた人がいる。だから頑張れた。誰にでもそういう存在はいるはず」と話します。それからもう一つ。「どんな時も、自分の軸となる大切なものは、自分で守り通すこと」ときっぱり。確固としたその思いがあるから、周りが応援したくなるのかもしれません。
 走り続ける石川さんにまた転機が訪れました。この5月に店を移転したのです。それまでの狸小路から4丁目プラザへ。「これもまた新しい出会いの一歩。不安と期待でドキドキする」と話す横顔は、どこか楽しそう。
 落ち込んだ時の気分転換は?と聞くと、「元気な人のライブに行くこと」と即答。「音楽で悩まされ、音楽に励まされています。でも、音楽は楽しいし夢がある。こんな仕事に巡り合えて幸せ」と、充実感いっぱいの笑顔を見せてくれました。

 
 
 
  10年前の私

「玉光堂PALS21で邦楽マネージャーをしていた頃。当時よくお店でイベントをやっていたヤマ(山崎まさよしさん)がキャンペーンで来札した時の写真です。今会っても“店どう?”と気にしてくれるのがうれしい。ほかにも若いアーティストと一緒に、売れるためにできることを考えていました。頑張る人を応援できるのは、今も昔も楽しいです」

 
 
[情報掲載日:2008.5/21]
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