海外通信
ストックホルム
〜スウェーデン〜 Stockholm
2007.6/20更新
自然はみんなのもの 素晴らしき「自然享受権」
(シティ特派員/綿貫朋子) 海外通信バックナンバー

 友人のステーンとウルリカに夕食に招かれたときのこと。最後に出てきたデザートに感動した。ラズベリーに生クリームがかかっただけなのだが、真っ赤な実が柔らかくて甘酸っぱくて、とにかく新鮮でおいしい! 「どこで買ったの!?」と問い詰めるようにして聞くと、二人は笑いながら、「散歩がてらに森で摘んできた」と話した。ステーンとウルリカの家は市内から電車で約40分の通勤圏内にあるのだが、すぐ近くには森が広がっている。「“自然享受権”があるからね」と、二人はちょっと誇らしげに付け加えた。

 「自然享受権」とは、スウェーデンに古くからある慣習で、誰が所有する土地であっても、ルールを守れば、森や湖などに自由に入って楽しむ権利がみんなにある、というもの。つまり、個人の私有地だろうが国有地だろうが関係なしに、ルールさえ守れば、自然の中を自由に散歩したり、キノコやベリー類を摘んだりできるのだ。一泊であれば、テントを張って泊まることもできる。「自然はみんなのもの」と考えられているからだ。

 もちろん前提として、ルールをしっかり守ることも要求されている。例えば、宅地や庭に侵入してはいけないし、農地で誰かが植えた作物も取ってはいけない。動物を傷つけてはいけないし、車やバイクも土地を傷めるおそれがあるから侵入禁止、ゴミを捨てるのも論外…など、いろいろある。でも、要は自然を破壊したり他人の生活やプライバシーを侵害しないという、ルールというよりは当然のマナーに近い。権利を行使するためには、各自の責任も強く求められているのだ。

 「自然享受権」については以前から知っていたが、それを身近に感じたのはこの時が初めてだった気がする。デザート皿を前に、なんと素晴らしい権利だろうとしみじみする私なのだった。

シティ特派員プロフィル

綿貫朋子(わたぬき ともこ)
メーカー在職中、北欧・スウェーデンに興味をもつ。退職後移住し、映画脚本やドラマ企画を学ぶ。映画テレビドラマ製作会社インターンを経て、現在脚本執筆活動中

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「自然享受権」はスウェーデンのほか、ノルウェー、フィンランドにもある慣習
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海岸・湖河川沿いなどは、自然保護の見地からと自然享受権を守るため、建築や増築などが厳しく制限されている
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国立公園や自然保護地域のルールは特に厳しい