海外通信
モンテ・アミアータ
〜イタリア〜 Monte Amiata
2007.5/16更新
生ソラマメとチーズはおいしい初夏の贈り物
(シティ特派員/大矢麻里) 海外通信バックナンバー

 イタリアで5月1日のメーデーは国民の祝日だ。その朝、知人のアンジェラから「今から出掛けない?」とお誘いがかかった。総勢15人で山へピクニックに行くのだという。しかし、貧乏暇なしとはよくいったもの。その日も片付かぬ仕事が山積していた。沈んだ声で断ると、彼女は大声で私を諭した。「“5月1日に働くと一生仕事に困る”って言い伝えを知らないの?」。何ですって! 私がすぐに机の前を立ち去ったのは言うまでもない。

 冬はスキー場になるモンテ・アミアータ山にたどり着くと、すでに男性陣は火の用意、女性陣は持ち寄った総菜をテーブルに並べていた。一方アンジェラは、かごに山盛りの“ソラマメ”を運んでいた。日本のものと比べて若干ほっそりして、実も小粒そうだ。日本ならば、ソラマメご飯も良いが、ここはイタリア。ゆでてサラダにでもするのかな? すると彼女は、器用な手つきでさやから実を取り出し、そのままポーンと口に放り込んだ。なんと、ソラマメは生のままで食べるのだという。そして羊の乳からできた“ペコリーノ・チーズ”と一緒に味わうのが定番とも教えてくれた。

 早速私も試してみると、ソラマメは生でも十分に柔らかい。青臭いどころか、ほんのりとした甘みさえ口に広がる。程よい塩気のチーズとの組み合わせが絶妙で、ソラマメ、チーズ、ソラマメ…と永遠に繰り返したくなる。「やめられない止まらない」である。私の前には、見る見るうちに空っぽのさやの山ができていった。

 満腹になって芝生に寝転べば、頭上には5月の青い空が広がっていた。今日は仕事のかわりに、旬の味覚を堪能し、新緑をめでる日というわけか。私はひと粒だけ残しておいたソラマメを、空にかざしてみた。ひすい色をした初夏の贈り物は、光を浴びていとおしく輝いていた。

シティ特派員プロフィル

大矢麻里(おおや・まり)
イタリア・コメンテーター。幼稚園教諭、商社OLを経て、自動車誌記者だった夫と1996年結婚。同時に一念発起してトスカーナの古都シエナに移り住む。現在はラジオ・雑誌・Webのイタリア特集に欠かせない顔として、女性や生活者の視点からレポートをしている

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