共感!!ユニークファンド



共感!!ユニークファンド 酒造り、出版、地域振興

(2008年 11月 25日 火曜日 産経新聞 東京朝刊 生活面)


 ■損得だけでない応援型出資


 酒造り、本の出版、地域振興…。こうした特定の事業を支援するユニークなファンドへ出資する人が増えている。株と同様に配当を期待できる一方、元本割れの恐れがあるものの、損得勘定だけではなく、純粋に作り手らのこだわりに、出資者が共感、「応援マネー」を出すケースもある。出資への不安感を少しでも解消しようと、お金を出す側と生かす側が交流し、信頼関係を築く試みも始まっている。(安田幸弘)


 ≪1口5万円≫


 「うまい」「口当たりが柔らかい」。10月25日、JR東京駅前の新丸の内ビルに集まった20〜60代の左党が、思い思いに純米酒を味わった。同ビルに入るベンチャー企業「ミュージックセキュリティーズ」が主催した「全量純米蔵ファンド」の説明会だ。

 このファンドは、全国の老舗酒造22社で作る「全量純米蔵を目指す会」(小川原良征代表幹事)を応援する商品。昨春発足した会は、徳島県阿波市産の高級酒米を使用し、3年間熟成させるなど妥協しない純米酒造りを目指している。

 とはいえ、金融機関からの資金調達は容易ではない。そこで着目したのがファンド。「多くの人に出資していただき、日本酒の応援団になってもらえたら」(小川原代表幹事)という思いもあり、ファンド運営などに実績のある同社との協力を決めた。

 1回目の募集は昨秋。1口5万円で募ったところ、9日間で約1000万円が集まった。これまで3回募集を行い、近々4回目を行う予定だ。出資者には純米酒(300ミリリットル瓶入り)が3年間に計18本送られるほか、順調に売れれば配当もつく。また、加盟酒造会社の酒蔵での試飲会にも参加でき、生産者の「顔」を直接、見ることもできる。

 同社の小松真実社長(33)は「事故米の問題などがあったので、厳選したコメしか使わない本物志向のこだわりが受け入れられた面もあると思う」と話す。


 ≪海外に孤児院建設≫


 東京都渋谷区の英治出版は「ブックファンド」を扱う。平成12年の開始以来、50冊以上の本をファンドで世に出した。初作品は中国人留学生だったボヤンヒシグの詩集『懐情の原形』。4400部売れ、出資者には16%の配当がついた。山田真哉著『女子大生会計士の事件簿』シリーズなども大ヒットさせてきたが、原田英治社長(42)は「損益だけがすべてではない」という。

 一昨年、絵本『南の島の「プルワン」』を発売した。印税は、スリランカの孤児院建設に充てるというファンドで、1カ月で720万円が集まった。元本割れしたものの、孤児院は建ち、多くの出資者に喜んでもらったという。

 「金銭的リターン以外にも、共感することができる目的が達成されれば、別の満足感を(出資者に)感じ取ってもらえる」と原田社長。「今は『共感資本主義』の時代。共感してくれる人を増やしたい」と話す。


 ≪見える行き先≫


 地域活性化を目的に17年に設立した企業「地域活性ファンド」(東京都中央区)は現在、「100年コミュニティファンド」(1口10万円)と銘打って、神戸市で高齢者専用賃貸住宅の建設事業を応援している。

 出資者の一人、新潟県長岡市の女性(60)は「金融機関に託したお金は、どう使われるか分からない。兵器に使われているかもしれない、公害のもとになっている可能性もある。そう思い至ってから、何かいい方法がないかとずっと気になっていた。たまたま地域活性ファンドを知り、出資を決めた」と話す。

 『「新しい貯金」で幸せになる方法』などの著書があるルポライターの樫田秀樹さん(49)は「身の回りを見渡せば、自分のお金を生かしてくれる団体は結構ある。貯金の一部でもいいから、お金の行き先が見えるようなファンドに出資するのも悪くないのでは」と話している。