「かわいい」って何?
【「かわいい」って何? 変わる美のバロメーター】(下)正統派より変化球
(2008年) 10月 16日 木曜日 産経新聞 東京朝刊 生活面)
■イコール「好き」「ほしい」
花王は、昭和51年から続く自社のヘアケア商品「エッセンシャルダメージケア」を平成18年、「カワイイ」をキーワードに刷新した。メーンキャラクターに起用されたお笑いコンビ、南海キャンディーズの「しずちゃん」こと山崎静代さん(29)は身長182センチ、体重79キロと大柄。ライバル商品である資生堂「TSUBAKI(ツバキ)」の顔に起用された仲間由紀恵さん(28)や竹内結子さん(28)といった一連のスレンダーな女優らとは印象が大きく異なる。
発売前、同社がターゲット層の20代前半女性に対して行ったアンケートでは、「これまで一般的だった目鼻立ちのはっきりとした正統派の美人より、マイナスポイントを克服した人や前向きなイメージの強い人を『かわいい』『好き』と支持する傾向が強かった」(担当者)という。
ビューティーケア事業の池辺順子さんは「調査では、好きなタレントに『かわいい』という表現を使うことが分かった。以前は好きな女優のことを『かわいい』とは言わなかった。今は『かわいい=(イコール)好き』という意識がある」と分析する。実際、花王の同商品の市場シェアは刷新前と比べ1・5倍に拡大。「しずちゃん」の“かわいい効果”が購買意欲をかき立てる一因となったようだ。
「かわいいキャラクター」の代名詞ともいえるサンリオの「ハローキティ」も変化している。昭和49年の誕生時は小学生の文具向けだったが、今やパソコンをはじめ、何と紳士服にも使われるようになった。
こうした傾向について、ヘアメーキャップアーティストの照沼美紀さんは「かつては、小柄で童顔、メークでいうとピンクの淡い色使いが『かわいい』の定番。今は、全体がモードやエレガントでも、ワンポイントにイメージの違う色や素材が入れば『かわいい』になる。『ちょっとした変化球=かわいい』の時代」と指摘する。
NHKは今年4月から、新番組「東京カワイイ★TV」(総合・木曜午前0時10分)の放送を始めた。ファッション、コスメティックの流行などを発信。視聴率は前年同時間帯の約2倍と好調で、7月からは香港で放送されており、今秋には上海で放送される予定。日本の現代版「かわいい」が海外へ飛び出し始めている。
海保香織ディレクターは「『かわいい』は文化でなく『ほしい』という気分の消費行動だと思う。季節ごとではなく、1週間単位で変わる独特のトレンドを形にするビジネス力に注目している」と話している。(小川真由美)
