「ポスト福田」静かにさや当て
「ポスト福田」静かにさや当て
(2008年 9月 3日 水曜日 産経新聞 東京朝刊 社会面)
福田康夫首相の退陣表明で、一気にスタートを切った「ポスト福田」レース。2日、「資格がある」といち早く自民党総裁選に立候補を表明した麻生太郎幹事長が本命視されるなか、対抗馬として名前が挙がっているのは、小池百合子元防衛相や石原伸晃元政調会長ら。景気回復を求める消費者や各界の厳しい声のなか、総裁のイスをめぐる“さや当て”が始まった。
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■余裕 麻生太郎氏
「リーダーシップは取らねばならない」。2日午前、総裁選への出馬を表明した麻生太郎幹事長。安倍晋三前首相退陣後の総裁選で本命視されながら、包囲網を敷かれた反省からか、強気ながらも慎重な対応が目立った。
この日は午前9時過ぎ、トレードマークの青いネクタイを締めた麻生幹事長は、東京都渋谷区の自宅前で無言のまま車に乗り込んだ。党本部に着くと、いつになく険しい表情。報道陣から声をかけられると、軽く右手を挙げて応えた。
「(総裁を)受ける資格はあると思う。自分なりの考えを実行したい」。午前11時ごろ、自民党本部の会見で出馬の意向を示した。相次ぐ質問にジョークを交えて答え、余裕の笑みも。
会見で、安倍前首相、福田首相と2代続いた“政権放棄”に、海外メディアが「リーダーシップ不在」と指摘した点について、記者から「ご自身はどうですか」と質問を受けると、「『ご自身は意志が薄弱ですか』と聞いているのか」と皮肉交じりに聞き返し、笑いを誘った。
総裁選は幹事長が仕切ることになっているため、出馬表明後も党本部で執務をこなし、午後3時には外出。午後5時の与党幹部の会議に出席後、「12日(の臨時国会開会)をご破算にしなければならないという話をした」と淡々と述べ、車に乗りこんだ。後部座席には大好きなマンガ雑誌が数冊積まれていた。
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■煙幕 石原伸晃氏
「20人のハードルがあるということです」。立候補が取りざたされる石原伸晃氏は、出馬の可能性の問いに、出馬に必要な推薦人の数を挙げたが、明言は避けた。
石原氏は午前9時40分ごろ、都内の自宅を出発。福田康夫首相の退陣表明に「本当にびっくりした」。党内に自身への出馬待望論があることについては「知らない。(本当だとすれば)ありがたい話です」と涼しい表情でかわした。
午前11時からは永田町の党本部で開かれた党役員会に出席。終了後、報道陣から「麻生さんが出馬表明したが」と尋ねられると、「それは当然でしょう。ナンバー2なんだから」と答え、総裁選については「政策論争を繰り広げることが非常に大事」と話した。
午後には派閥の会合にも出席し、しばし山崎拓会長らと話し込む姿も。去り際にも、「おれ、幹事長(候補)に名前が挙がったことがあるが、なれなかったもの」とけむに巻いた。
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■沈黙 小池百合子氏
小池百合子氏は2日午後、衆院議員会館で報道陣から「総裁候補に推す声が高まっているようだ」と水を向けられ、「まだ聞いておりません」と意味深長な回答を返した。
白のスーツ姿の小池氏は、「個人的なことよりも、党全体の中でどういうことが必要かを考えたい」と明言を避けた。その後も「出馬には前向きととらえていいか」と食い下がる記者に対し、「ノーコメント」。決断の時期についても「ノーコメント」とした。
夕方には東京・六本木の中川秀直衆院議員の事務所が入るマンションを訪問。小池氏は「国内外のことについて広い意味で意見交換をした」とし、核心には触れなかった。
午後に議員会館を訪れた小池氏の知人女性は「約束がキャンセルになるかと思ったらいつも通りでしたね」。様子については「落ち着いていて、何の力も入っていない。(自らの総裁選出馬が取りざたされている)新聞を見て笑っていた」と話していた。
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■草野厚氏「小池氏出るかも」
慶応大学教授で政治学者の草野厚氏の話「福田康夫首相はプライドの人。臨時国会でじり貧になっての退陣は頭の中になかった。この突然の辞任は国際的に見てもマイナス。1年ごとに政権を放り投げる国は海外からのさらなる日本売りにつながる。一方で、誰が総裁になっても国会のねじれは解消されず、政権は引き続き不安定だ。次は麻生太郎氏だと一般的に言われていて、自分もそうなると思う。麻生氏は公明党と接近しているので、誰が対抗馬になっても公明票が欲しい議員が支持するのではないか。ほかに手を挙げそうなのは、推薦人が集まれば小池百合子氏。中川秀直氏が推すだろうし、彼女は勇気があるので出馬するのでは。小池、石原伸晃氏などの名前が出ているのは、自民党が民主党に打撃を与えるためには具体的な政策より、福田首相の暗い印象を払拭(ふっしょく)できるイメージが必要だからだ」
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■すぎやまこういち氏「国益重視の麻生氏」
作曲家のすぎやまこういち氏の話「福田康夫首相の退陣表明は中国や韓国から惜しまれた。ギョーザ事件では中国内で同じ事件があったのに、中国の要請通り発表を控えるほどの『媚中派』だったからだ。尖閣諸島や竹島問題など国家間のせめぎ合いがある。次期首相は中韓に嫌がられても国益を優先する保守政治家を望む。在野では平沼赳夫元経産相が良いが、自民党では麻生太郎幹事長だ。麻生氏は前回総裁選で有力候補だったが、信念がなく自民党に都合がよい福田首相に落ち着いた。麻生氏は『失われた1年』を取り戻し、安倍晋三前首相がやりかけた周辺事態法、安保問題、教育改革などの懸案を進めてほしい。党内外で抵抗が予想され、紆余(うよ)曲折もあるだろう。自民、民主両党ともに『民主主義者』と『全体主義者』が交じっている。混乱回避のために政界再編を期待する」
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■吉永みち子さん「関心拒否」
ノンフィクション作家の吉永みち子さんの話「社会保障、安全保障や日本経済が崩壊しかかっているが、安倍晋三前首相に引き続き首相を投げ出した。泥まみれでも踏みとどまる意思がなく、1カ月前に内閣改造したのは何だったのか。次期首相はこの国の将来に対する明確な哲学やポリシーを持ち、国民を納得させられる人であってほしいが、現在、喧伝(けんでん)されている政治家では見当たらない。私は自民党総裁選への関心を意識的に拒否している。福田康夫首相の退陣表明は日本の将来を案じてではない。総裁選という『お祭り』の太鼓をたたいて国民の関心を引きつけ、自民党が政権を維持するために起死回生をかけただけだ。新首相選出の『ご祝儀相場』で解散総選挙を行い、乗りきろうという魂胆には断固乗らない。せめてもの国民の意地だ」
