雇用 「パート」で区別されない
【ゆうゆうLife】雇用 「パート」で区別されない 改正法から4カ月(1)(2008年) 7月 29日 火曜日 産経新聞 東京朝刊 生活面)
■正社員と同等の場合 賃金、福利厚生も同じに
正社員より短時間で働く「パートタイム労働者」(以下、パート)の労働環境が変わりつつあります。仕事内容や異動条件などが同じなら、社員と待遇に差を設けないことなどを盛り込んだ「改正パートタイム労働法」が4月に施行され、パートの正社員登用も盛んです。パート、正社員の区分を見直す動きも出てきています。パートを取り巻く現状をリポートします。(佐久間修志)
「パートと社員の間には、越えられない壁のようなものがあります」。関西地方の大型スーパーで働く坂田のぞみさん(55)=仮名=は話す。
坂田さんは子供が小学校に入った34歳でパートを始めた。だが、景気が悪化し、会社は社員をリストラ。パートも売り場を仕切る必要が出てきた。坂田さんも子供が中学に入った39歳からは、勤務時間が7時間に増えた。
時には自分の判断でトラブルも処理。売り場の仕事内容は「社員と比べて遜色(そんしょく)なかった」という。
その結果、時給は上がったものの、手取りは最大でも月16万円。時給換算すると、高卒の新入社員よりは多いが、同年代の正社員とは比べものにならない。夫のいない同僚は「仕事を掛け持ちしないと生活できない」と訴えていた。
社員は夏休みに10連休取る有休も、パートは連続で取れない。「なんか、不公平やなあ」。勤務シフトを見ながら、もやもやがたまった。
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パートの割合を増やす企業は増えている。総務省の「労働力調査」によると、パートは平成2年の722万人から平成19年には1346万人と倍近い。労働者全体に占める割合も約15%から約25%に増えた=グラフ。
数が増えただけでなく、職場での役割も変化している。厚生労働省が18年に行った実態調査では、「職務が正社員とほとんど同じパート労働者がいる」事業所は13年調査の約41%から約52%に増えた。
東京大学の佐藤博樹教授は「市場環境が不確実性を増す中で、企業は長期の雇用関係の正社員を縮小し、非正社員の活用を拡大してきている。正社員が減少し、非正社員が増大した結果、従来であれば、正社員が従事していた仕事にも非正社員が従事するようになり、正社員と同等の働きをするパートが出てきた」と分析する。
一方で、パートの待遇がその働きに見合っていないケースも少なくない。
厚生労働省の外郭団体「21世紀職業財団」の調査では、職務や人材活用の仕組みなどが正社員と同等のパートについて、賃金水準が正社員と「ほぼ同額」という事業所は約15%。「6割以下」という事業所も8・5%あった。
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改正されたパート労働法のポイントは、(1)労働条件の明示と説明義務(2)均衡のとれた待遇の確保の促進(3)正社員への転換推進(4)労使の紛争解決援助(5)事業主支援の整備−の5点だ。
このうち、最大の目玉は均衡待遇。改正法では「社員」か「パート」かにかかわらず、仕事の内容や成果、能力などを考慮して待遇を決める。
特に、社員と同じ仕事に携わり、人事異動などの処遇が実質的に社員と同等のパートには、異なる取り扱いを禁止している。厚労省短時間・在宅労働課は「指針だったものを改正で義務化した。これで一層の待遇改善が進む」と強調する。
ただ、実際に業務内容や異動条件が正社員と同じパートは「全国で4〜5%」とされ、それ以外のパートについては依然、待遇改善が求められているに過ぎない。
また、パートが従業員の大多数を占めるスーパーなどの流通業界では、「パートの待遇は、労使の問題というより経営問題。パートで働く側に一定収入以内で働きたいという希望もあり、時給を増やせば解決というほど単純なものではない」(流通関係者)との声もある。
佐藤教授は「議論すべき課題は『差別的取り扱い禁止』の適用範囲ではなく、『こういう様態のパートなら、待遇を正社員と異にしてはならない』といった適用条件が適切であるかどうかにある。条件が適切であれば、差別的な取り扱いとなる対象者は少ない方が望ましい。ルールのあり方は、法の運用状態を見ながら検討されるべきだ」としている。
