たばこ1000円? 

たばこ1000円? 社会保障財源…大幅増税に与野党“協調”
(2008年 6月 9日 月曜日 産経新聞 東京朝刊 一面)

 基礎年金の国庫負担率引き上げを来年度に控えて、2・3兆円の財源捻出(ねんしゅつ)が大きな政治課題となっているなか、与野党がそろい踏みでたばこ税の大幅増税に向けて動き出した。超党派の「禁煙推進議員連盟」(会長・綿貫民輔国民新党代表)の有志議員が11日に、久々に議論を再開するほか、経済成長を通じて財政再建を目指す「上げ潮」派も超党派の“たばこ1箱1000円議連”を発足させる運びで、1箱の平均価格を欧米並みの1000円に値上げすべきだとの論調が強まっている。(加納宏幸)
 増税論議のきっかけは3月4日付本紙「正論」欄に日本財団の笹川陽平会長が寄稿した論文だった。
 「たばこ増税は喫煙規制が進む世界の大勢であり、実現すれば大きな財源になる。国会には超党派の議員立法として正面から取り組んでいただきたい」
 笹川氏は、たばこ1箱の値段を平均1000円に値上げし、現在の消費量が維持されるならば、消費税4%に相当する9兆5000億円の税収増が見込まれると試算。仮に消費量が3分の1になっても3兆円の税収増が見込め、「消費税よりも先に論議すべきテーマだ」と断じた。
 来年度から基礎年金の国庫負担率を3分の1から2分の1に引き上げることが決まっており、必要な2・3兆円の財源をどう手当てするかに頭を悩ませていた与党がこれに飛びついた。
 消費税率引き上げに慎重な「上げ潮」派の代表格で、ヘビースモーカーでもある中川秀直自民党元幹事長は禁煙議連のメンバーではないが、「1000円になってもたばこを吸う人は尊敬されるゾ!」と値上がりしても喫煙を続ける人は、高額納税者として評価を受けるという理屈で賛同。「たばこ1箱1000円」を推進する超党派議連を近く設立する考えだ。
 一方、厚労族にとっても後期高齢者医療制度(長寿医療制度)への批判を受け、社会保障費の伸びを毎年2200億円抑制する政府方針の見直しも浮上していることもあって、「渡りに船」というわけだ。
 厚労族の重鎮である自民党の尾辻秀久参院議員会長ら禁煙議連のメンバーは11日に笹川氏を招いて国会内で勉強会を開くことを決定。議連関係者は「財政再建、医療費削減−と一石二鳥の効果がある」とやる気満々だ。
 一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長も5月31日、横浜市で「たばこの税金を増やし、その分で高齢者の保険料を高くしないように考えていく必要がある」と街頭演説をぶった。同党内では議員立法でたばこ税を引き上げる動きもあるという。
 愛煙家からは「取りやすいところから取るなんて姑息(こそく)だ」(自民中堅)との不満も漏れているが、財政難や喫煙による健康被害を盾にされ、分が悪いことは間違いない。
 ただ、タバコ生産農家や小売業者などの反発は必至だ。京大の依田高典教授(応用経済学)らのグループは「たばこを1000円にすれば、9割が禁煙を考える」との研究結果をまとめた。いきなり1000円にすることへの批判も考慮し、自民党内には落としどころとして500円という数字を上げる関係者もいる。今後は、値上げ幅と税収増の関係や消費動向がどうなるかがテーマになりそうだ。