「ヒートアイランド」44億円損失

「ヒートアイランド現象」で東京23区は… 年間44億円損失 研究グループ試算
(2008年 5月 20日 火曜日 産経新聞 東京朝刊 社会面)

 ■睡眠障害で健康被害
 都市部の気温が郊外より高くなる「ヒートアイランド現象」の影響で、東京23区では健康被害を中心に年間44億円の損失が出ているとの試算を、産業技術総合研究所・安全科学研究部門(茨城県つくば市)の玄地裕グループ長(都市熱環境)の研究チームがまとめた。暑さによる睡眠障害など、健康被害で減少する余命などに基づき損失を計算したもので、横浜市で開催中の日本気象学会で21日発表する。
 玄地グループ長らは、高温による健康への影響は、熱中症などより睡眠障害の方が幅広いと想定。23区の住民420人にアンケートし気温と睡眠の質の関係を調査した。
 結果から就寝直後の気温が、睡眠の質を左右することなどが判明。午前0時、外気温が26・7度から1度上昇すると、10%の人が睡眠障害になり、23区で年間114億円相当の健康被害が生じるとした。
 暑さによって体調が悪くなる(熱ストレス)ことの損失8億7000万円や、熱中症による損失1億8000万円が加わるが、逆に寒さによって体調が悪くなる(寒冷ストレス)損失が80億円減る。さらに冷暖房に使われるエネルギー収支などを加味し、ヒートアイランドが進んでいなかった1970年代半ばから80年代の気温と近年の気温を比較した上で、年間損失額をはじき出した。
 玄地グループ長は「有効なヒートアイランド対策を探るためにも、影響額の算出が必要になる」と話している。

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【用語解説】ヒートアイランド現象

 都市の気温分布を観測すると都心は高温で、郊外になるほど低い。地図に等温線を引くと都心が海上の島のように見えるため、ヒートアイランド(熱の島)現象と呼ばれる。(1)人工的な排熱(2)緑が多い地域は水分の蒸発が盛んで気化熱が奪われるが、緑の少ない都心では起きにくい(3)舗装道路やコンクリートの建物に吸収された太陽熱が夜間放出される(4)ビルで涼しい海風が通りにくい−などが原因とされる。20世紀末までの100年間で世界の平均気温は0・6度、日本全体は1・0度上昇したが、東京都心の上昇は2・9度に達した。