届け宇宙人への電子メール 

【科学】届け宇宙人への電子メール 25年前に送信、7年後にも返信来る!?
(2008年5月 12日月曜日 産経新聞 東京朝刊 メディア・特集)

 25年前、宇宙人あてのメッセージを電波で送った日本の天文学者がいる。太陽系や人類の存在を伝えたその“電子メール”は、すでに目的の星に到着しており、知的生命がいれば解読に成功している可能性がある。早ければ2015年に、地球に返事が届くかもしれない−。宇宙人との「メール交換」は果たして実現するだろうか。(長内洋介)

 ★見つかった原画
 宇宙人にメッセージを送ったのは、東大東京天文台(現国立天文台)の助手だった平林久さん(64)と同教授だった森本雅樹さん(75)。出版社から「子供たちに夢を与える企画」を依頼されたのがきっかけだ。1983(昭和58)年8月、旧暦の七夕に合わせて、「彦星」として知られる恒星「アルタイル」に米国から電波信号を送った。
 信号を解読すると、13枚の画像が現れる。平林さんが描いたこの原画は長く所在不明になっていたが、昨年秋、森本さんが顧問を務める兵庫県立西はりま天文台で見つかった。
 画像は自然数や元素、太陽系の特徴やDNAの仕組みなどを紹介。差出人が「太陽系第三惑星」の人類であることが示されている。また、原始生物からほ乳類に至る生命の進化史も記した学術的な内容だ。
 しかし最後は、なぜかエタノールの分子式と「乾盃(かんぱい)」の文字。お互いの出会いを祝福する“暗号”だ。平林さんは「水割りを飲みながら思いついた。ここだけは宇宙人も、理解できないでしょうね」と笑う。遊び心もたっぷりだ。
 地球からアルタイルまでの距離は約16光年。メッセージを乗せた電波信号は99年に到着している。知的生命体が住む惑星が存在し、すぐに返事を送ったとすると、2015年に地球へ届くことになる。

 ★2進法で図形表現
 宇宙人へのメッセージは74年、米国の科学者らがプエルトリコのアレシボ天文台から、ヘルクレス座の球状星団M13に送ったものが有名だ。しかし、M13は地球から2万3000光年も離れており、返事が来るのは最短でも4万6000年後だ。
 メッセージは電波の強さや周波数を変えることで、2進法で情報を表現する。例えば「0」と「1」の信号を全部で35個送ったとする。35を素因数分解すると5と7の積にしかならない。そこで信号を5×7の縦横に並べて「0」と「1」を塗り分けると、図形が現れる仕組み。ポイントは信号の総数を素数の単純な積にすること。平林さんの信号は6万5533(71×71×13)個で構成。電波信号を受信できるくらいの知的な宇宙人なら、一辺が71マスの正方形の画像が13枚現れることに気づいてくれると、期待している。

 ★「存在する」83%
 宇宙人探しに取り組む天文学者らで構成する「SETI(地球外知的生命探査)研究会」が昨年11月、会合に参加した科学者や報道関係者らを対象に実施したアンケートでは、「宇宙人は存在する」と答えた人は83%。発見される時期は「100年後」が最も多く39%だった。
 平林さんは「宇宙人はいると思うが、見つけるのはとても難しい」と話す。アルタイルも惑星が見つかっていないので、宇宙人から返事がくる可能性はほとんどない。
 「でも、それでいい」。メッセージの存在を知った小学生から、応援の手紙をたくさんもらった。「子供たちの心には、ちゃんと届いて返ってきましたから」
 電波天文学が専門の平林さんは、旧宇宙科学研究所教授を経て今年4月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙教育センター長に就任した。子供たちに宇宙の不思議さや魅力を伝えようと、次のアイデアを練っている。