●森優子プロフィール
2005.9/14 更新
森優子の楽しむ旅行術バックナンバー
スパイ活動のススメ(1) 飲食店のレシピ編
店の厨房にズケズケ入れるのは日本人観光客の特権なのだ

* 旅先でおいしいものに出会ったとき、「作り方を知りたい」「この食感の正体を知りたい」と思うようなこと、ありませんか? 少なくとも自分はたびたびあります。

 そんな時、私はとりあえず店の人に「これはとてもおいしいので作り方を教えて〜、キッチンをみせて〜」とズリズリ擦り寄ることにしています。

 結論からいって、無視されたり露骨にいやがられたことはまだ一度もありません。ダメな時は「今は忙しいからダメなの、ごめんね」とか「企業秘密なので無理なの」というふうにちゃんと断わってもらえるし、たいていは厨房をのぞきこむ程度なら許してもらえます。意外なことに、それほど庶民的ではない高級店でも「まったく無理」って感じでもないんですね。

 厨房に招き入れてもらったり、レシピを教えてもらったり。ちょっと特殊なことが許されるのはひとえに「こちらが人畜無害な外国人観光客だから」にちがいありません。

 きっとどの国の人も自分の国の料理・文化・風景には誇りをもっていて、それに興味をもってくれる外国人に対して反感を持つことはあまりないということでしょう。たしかに、たとえばもし自分がお好み焼き屋のおばちゃんなら「これおいしい、もっと知りたい、見たい」と目をギラギラさせている外国人に対しては悪い気はしない気がする。

 私の経験上、店の人は嫌がるどころかむしろこちらの動向を面白がったり、「おっしゃ、わしがこの国の代表だ」という感じではりきってくれることが多いように思います。

 結論。厚かましさは、外国人観光客の特権である。

 とにかくおいしいものに出会ったら、カメラを手にちょっと積極的に動くことをすすめます。レシピを探るとまで行かずとも、その行動はきっと旅にプラスαの思い出や感慨をもたらしてくれることでしょう。

スパイ活動のコツ→良質な野次馬であることをアピールすべし

* 「こんにちは」は現地の言葉で

 相手の機嫌を損ねてトクすることはあまりない。まずは挨拶でアプローチ。日本語や英語でもOKだが、現地語であればなお好感度アップ。

「片手にカメラ・片手にメモ」が基本の小道具

 レシピを記録するためだけでなく、「人畜無害な外国人観光客・良質な野次馬」であることをアピールする小道具であるともいえます。

「言葉が通じない」のはむしろ武器かも

 言葉が通じないことは、たしかに壁ではあります。
 が、私はむしろこのような場面ではそれがメリットになるような気もしています。警戒されないし、なににつけても「しょうがないなあ、もう」と許してもらえる気がするからです。
ただし黙っているだけでは間が持たないので、できれば「これ何?」「どのように?」という程度は現地語で言えればベター。さらに「すてきだ!」という誉め言葉を言えれば、相手がノリノリになってくれる可能性大。

* 料理人の邪魔をしないように、写真を撮る

 相手は仕事中。その場でレシピを細かく聞き出すのは迷惑だし理解しながら書きとめるのも困難です。切る・揚げる・すりつぶすといった行程を写真に撮り、たとえば「茶色の液体→おたま一杯、ビンに入った透明の液体→鍋の中にぐるっと
一周まわしかける」という程度のメモを書きとめておきます。重要なのは、調理の流れや切り方・炒め方などを目に焼き付けておくこと。

謎はあとで解明させる

 調味料や素材の正体は、あとで自分でなめさせてもらって探るか、あるいは料理人に現地語で名称を書いてもらい、あとで言葉が通じる人(ホテルのスタッフなど)に解明してもらうといいでしょう。

スパイ活動は旅をどんどん濃厚にする

*
高級ホテルのカフェ・レストランのメニューはたいてい英語と現地語が併記されておるもの。コーヒーやミルクやハンバーガーといった定番メニューからローカルフードまで、英語で(たまに日本語も)解説されているのでわかりやすいし、言葉の通じない他店で注文する時に役立ったりもする。ダメもとで「記念にちょうだい」といってみましょう。「革表紙からはずした中身だけならいいよ」と言ってくれることも多いです。
 たとえば外国人向けの「日本料理」の本には、寿司・天ぷら・スキヤキは掲載されていても、お好み焼き・たこ焼き・カレーライス・肉コロッケといった庶民料理はまず紹介されていません。

 同じ現象が他国の料理本にも見られる、すなわち野次馬観光客が本当に知りたいと思うような庶民料理のレシピは、スパイ活動でしか知りえない可能性が高いと思うわけです。

 それにスパイ活動はたとえ短期間の旅でも、現地の人との距離をグッと縮め、深めてもくれるひとつの有効なテクニックだとも思います。

 たとえば私がベトナムの某レストランの厨房でニョクマムのびんを指さして「このブランドがベストか?」と尋ねたときなど……
「ここだけの話、リーズナブルだから店ではこれを使っているが、本当においしいのは○○ブランドの一番絞りだ」
「そうだそうだ、最高のニョクマムといえば○○ブランドだ」
「△△市場のグエンさんの店で手に入るぞ」
というふうに、どんどん話が盛り上がっていったのでした。

 ちなみに私の友人(日本人)に、やはり現地の人からレシピを聞き出すのが得意な人がいるのですが、彼女は私のようにいきなりズケズケ厨房に入っていくことはせず、何日も店に通って相手と顔なじみになり、うちとけたところでようやく厨房に入らせてもらうようにしているそうです。いずれにせよ、スパイ活動には相手への敬意・礼儀、そして何より「相手を知りたい」と思う気持ちが不可欠と思う次第。

 恐縮ながら、ちょっと宣伝。東南アジア各地に拙者がスパイとして潜入して得た28のレシピ+濃厚なエピソードをもりこんだ「東南アジアガハハ料理ノート」(晶文社出版)という本がございます。はっきりいってどの料理も超簡単でオイシイ(自画自賛)。 特にシンガポール名物の海南チキンライスやフィリピンのカレカレはほかではめったにレシピが掲載されていないうえに、味のほうも絶品です。ぜひ、ぜひによろしく〜!

こちら↓で一部立ち読みできます。
http://www.shoub.co.jp/b2.html#5

ページtopへ戻る▲