イトヒロ氏が大学のサークルで漫画を描く機会を得たとき、
素直に「描きたい」と思ったのは少年時代に夢中になった虫捕りの感触やときめきだった。
「なあるほど、そこから現在の『虫のイトヒロ』に至るのだな」と思いきや、「そこから一直線ってわけでもないんだな〜」とご本人。はて。
「旅の虫眼鏡」著者イトヒロさんのお話、前回のつづきをどうぞ。そしていよいよ、旅の話へ。 |
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ゲスト=イトヒロ氏 |
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| 聞き手=森優子 |
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「あ、生き物が好き」と
開眼したのは40歳近くなってから |
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イトヒロさんは大学を卒業してすぐにフリーのイラストレーターになられたんですよね。 |
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うん。学生時代もすでにイラストの仕事をたくさん受けてたから、自然な流れでって感じで。 |
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やはり虫の絵を描き続けたいという思いが原動力としてあったのでしょうか? |
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いや。漫画サークルの中では『虫のイトヒロ』という感じにはなっていたけれど、当時はまだ虫好きという以上でも以下でもなかったかもしれない。
今考えると、駆け出しの頃は本当に甘ちゃんだったんだよね。たとえば仕事で高山植物の絵を描くとするでしょ。編集者から「葉っぱの形と花びらの数が違うから描き直して下さい」って言われたりすると、当時の俺は「えーっ、そんな細かいところ誰も見ないよ」なんて渋ったりしてたわけ。 |
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へえっ。今のイトヒロさんの作品からは考えられない無頓着っぷりですね。 |
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そうなの。「それじゃダメだ」って気づくのに一年ぐらいかかったんだよ。恥ずかしいけど、それぐらい当初はのぼせてたんだね。
実はね、「あー俺は自然が好きなんだなあ」って気づいたのは30代後半(注1)になってからなんだよ。 |
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これまた意外。 |
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たとえば滝を見たとき、若い頃は「すげーな、荘厳だな」っていうぐらいのところに感想がとどまってた。でも今はその滝の水がどこからきたとか、うっそうとした森の黒さが空の白さを際立たせる感じとかに目が行くし、惹かれる。
ぱっと見た目の印象だけじゃなくて、それをつかさどる自然のなりたちみたいなものが面白くなったり、心を動かされるようになったのは、本当に最近のことなの。 |
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ご著書「旅の虫眼鏡」はそんな自覚が芽生えてからの作品ということですか。 |
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うん、あれはもう「誰から頼まれたのでもなく自分からすすんで楽しんで書きました」って感じだったんだけど、書きながら「へー、俺って自然の生物をこんなに好きだったのか」って自分でも驚いたぐらい。 |
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『旅の虫眼鏡』は奥さんの向山昌子さん(注2)とアジア・アフリカをまわった旅がおもな土台になってるんですよね。
では、いよいよ旅の話へとまいりましょう。 |
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| プレゼント当選者発表! |
| イトヒロ(伊藤博幸)氏直筆のサイン色紙プレゼントに、たくさんのご応募ありがとうございました。 |
| 夏目
とよこ 様 |
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| ↑イトヒロ氏。「タイの道端でジャックフルーツの木をしげしげと観察していたら、そばにいたおじさんが『これやる』って切ってくれたんだよね」 |
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| ※注1→自然への目覚めは30代後半になってから |
『自然が好き』という自覚が芽生えたひとつの要因は、息子・ナオ君の誕生だった。
「ベビーカーを押して歩くスピードとか、息子に『こら砂喰っちゃいかんぞ』ってしゃがんだ高さとかに、ちょうど自分が子供だった頃に見たのと同じものが見えたの。なんだ東京にもカタバミが生えてるじゃんとか、やわらかそうな草でも実は細かい棘が生えてるわとか。自然が好きになったというより、息子のおかげで子供の頃の目線が戻ってきたんだね」 |
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| ※注2→奥さんの向山昌子さん |
| 『旅で覚えたアジア的シンプル生活術(朝日新聞社)』『微笑みの貴公子―ホテリア−、冬のソナタに恋をして―(竹書房)』などの著者。 |
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