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2003.11.12 up

ドロボー対策決定版(5) ロマ(ジプシー)編

●ヨーロッパ名物(?)花柄スカーフのちびっこ集団
 「ローマの路上で、花柄スカーフを頭に巻いた子供たちに囲まれた」

 「マドリッドの教会前で、赤ちゃんを抱き花柄スカートをはいた女性にお金を恵んでほしいと求められ、まごまごしてる間に小さい子供にカバンをまさぐられた」

 ヨーロッパでこういう体験をした、あるいは話を聞いた人は多いでしょう。
濃い顔立ち
カラフルな花柄スカーフ
あんまりお風呂が好きではなさそう
 といった風貌が特徴です。
 すでにご存知でしょう、彼らはロマ(ジプシー)と呼ばれる人々。
ヨーロッパ名物(?)花柄スカーフのちびっこ集団
●ロマっていったい何者?
 定住の場をもたず、おもにヨーロッパ各地に散在する漂泊民族。
 発祥はインド西北部とする説が有力ですが、イギリス人が彼らをエジプト人(エジプシャン)と誤解したことが語源となってジプシーと呼ばれるようになりました。現在は彼ら自身の言語で『人間』を意味するロマ(またはロム)という呼称が正しいとされています。
●ロマ=ドロボーじゃないよ
 旅行者が直面するロマは「ワーッときてワーッと去る女子供のドロボー集団」であるケースがほとんどなので、ロマ=ドロボーという印象を持っている人が多いと思います。
 しかしそう決めつけるのはちょっと待った。
 彼らはヨーロッパ各地をファミリー単位で馬車や車を使って移動しながら(一ヶ所に定住しているロマも最近は多いが)、いろんな仕事をしています。
 たとえば…
農場で農作業の手伝い
ブドウが実る季節にはブドウ農場で収穫の手伝いを、麦の刈り入れ時期には麦の農場へ…という具合。
金物職人
ナベ・釜を作って売ったり、農具や馬具の修理をしたり。
占い
『ジプシー占い』はおなじみ。呪術が得意なロマも。
エンターテイメント
 彼らの音楽家・舞踊家としての感性はすばらしい! 結婚式などのハレの行事・祭りなどは、彼らのバイオリンがないと始まらないということも多い。
 仕事の内容はファミリーごと、あるいは個人で得意・専門分野が分かれています。『観光客ターゲットの盗み』が主な収入源のロマも中にはいるってことね。
●ちびっこロマの典型的やり口
 ヨーロッパの観光地・教会・広場・駅前などで、旅行者めがけて3〜12歳の子供集団が突進してきます。
 イラストのような手口と展開が典型的。
 彼らが手に持っているダンボールや新聞紙は、カモの注意をひきつけ、かつ目隠しの役割を果たす小道具です。
子供に対して、大人は手荒なことができない
集団で囲めばカモは動揺する
日本人旅行者の財布のありかや行動・心理パターン
 などなどを、彼らは熟知しています。
  私が初めて彼らに遭遇したのは、ローマのテルミニ駅(中央駅)前でした。
 あらかじめ友人から『ロマの子供に囲まれたら怒鳴って腕を振り回して追っ払え』と教えられていたので『あっち行けー』と叫びながら暴れると、彼らは「きゃはははは」と方々へ散っていきました(こっちは必死なのに笑われてしゃくにさわったのなんの)。
 注目すべきは、即追っ払ったにもかかわらず、私のウェストポーチはすでに半分ジッパーが開いていたということです。幸い、被害はありませんでしたが。
 彼らのたくましさ、団結力、技術ときたら、とにかくすごい。
 ロマの子供、おそるべし!
●ロマの子供に負けない手段は二つ
 日本人がそういう状況に弱くパニクってしまうことを、彼らはよーく知っています。
 彼らにやられたとき、とるべき行動はただ二つ。
1.逃げろ!
2.手を振り回し、怒鳴って追っ払え!
 彼らはすばしっこいので、気づいた時には体は包囲されています。相手が子供だとつい手加減してしまうものですが、そういった躊躇や迷いは一切捨てて『なにがなんでも自分の身(カバン)を守るのだ』という強い意志をもって暴れるのがコツです。
 叫ぶのは『あっち行け!』などの日本語でOK。
 そうすると『アチイケー、アチイイケー』などと真似てからかわれたりもしますが、それも彼らの心理作戦ゆえ、気にしないこと。
 彼らはたくましいので、こちらが振り回した手や腕がぶつかっても平気です。泣こうが転ぼうが、彼らはたいしてこたえてはいません。きっと元気に次のカモに向かって走っていくことでしょう。
ちびっこロマの典型的やり口<
ちびっこロマの典型的やり口<
ちびっこロマの典型的やり口<
ちびっこロマの典型的やり口<
ちびっこロマの典型的やり口<
●彼らにとってはブドウも財布も同じ収穫物?
 『子供に盗みを働かせるなんて、ロマの大人はけしからん!』と思う方もあるのでは。ここでロマ独特の感性についても触れておきましょう。
「ブドウの木になっている実は神様からのさずかりもの。ありがたくいただこう。それが野生のブドウであろうと、他人の畑のブドウであろうと」
 これがロマの感覚だと聞いたことがあります。
 彼らにとっては、他人の畑のブドウをちょうだいするのも道端の木イチゴを摘むのも旅行者のカバンからお金を抜くのもひっくるめて「収穫」であり「神様からのさずかりもの」だというのです。
 少なくとも「財布を盗むのは罪」という日本の常識は通用しないと考えたほうがよいでしょう。
 ロマの子供たちは小さい頃から一人前の仕事をまかされた、誇り高きプロであるとも言えます。
 我々は彼らにとっては実のなる木。同情している場合ではなさそうです。
●「お涙ちょうだい」の子供はレンタルの小道具?
 教会前の広場でロマの女性に「情け深いマダム、お慈悲を」と物乞いされることも多いでしょう。胸に小さな赤ちゃんを抱いているお母さんや、年老いたおばあさんというケースが多いです。
 が、中にはそれが盗みを働くためのカモフラージュ工作であることもあるので用心しましょう。
(1)よろよろおばあさん
 足腰が弱った哀れな浮浪者という雰囲気と風貌を演出。 よろけてカモにぶつかったりして危なっかしいが、目的を達成したあとはスタスタと背筋を伸ばして歩きだすなんてこともしばしば。
(2)赤ちゃん連れ母子
 乳飲み子を抱いてカモに近づき、こっちが「お金をあげようかどうしようか」とまごついたり気をとられているスキに他の子供が近寄ってカモのカバンをまさぐるというパターン。
 実は赤ちゃんは「レンタル」であることも多いというから驚きです。そう、カモの同情をかうための小道具として効果的だから。ひえ〜。
 いずれにせよ、旅先で物乞いされた時の対処や態度については、事前に考えを固めておくほうがいいと思います。
●怖がらず、ロマとの出会いを楽しむぐらいの気持ちでいこう!
 集団でワーッとくるロマはすごい迫力なので、はっきりいって怖い。しぶといし、ふてぶてしいし、中には「ケッ」とツバをはいてくる輩なんかもいて、身が縮み上がる思いになることもあります。
 でも、気後れしては負けです。
 私はあるときから気持ちを切り替え、いっそ彼らとの一騎打ちをひとつの楽しみ、ヨーロッパ旅行の洗礼と考えることにしました。
 「来るぞ来るぞ〜来い来いロマロマロマ……」と思っているとあら不思議、彼らが現れないとむしろさびしいというぐらいの気持ちになる。
 で、実際周りを囲まれたら待ってましたとばかりに「おりゃあああ」と追っ払う。すると、彼らはあっけないほど早々に去ったりする。というわけでみなさんにも旅行前に覚悟を決めることをすすめます。
 ドロボーになんか出会いたくないのは山々ですが、実は私は、都会で出会うロマのたくましさをちょっとたのもしく思っていたりもします。
 文筆家のみやこうせいさんは著書「ルーマニアの赤い薔薇」(日本ヴォーグ社刊。名著!)の中で、おもにトランシルヴァニア地方のロマについてではありますが、こう書いておられます。
「ロム(ロマ)は、はっきりいって天と地の支配者、あるいはあらゆる文明人よりも高度な自然の一部。ロムがこの世にいなかったら、どんなに淋しく味気ないことだろう。(中略)いつかある村の入り口にロムの女が座っていて、やがて立ち去り風景が急にあおざめたのを鮮烈に思い出す」
 都会のロマ、田舎のロマ、時代の流れもあって鮮やかな花柄スカーフをまとわなくなったロマもいれば、定住の道を選んだロマもある。ひとことでロマといってもいろいろですが、「いちどお手合わせ願おう!」ぐらいの気持ちで、いっそその出会いを楽しもうではありませんか。
 もちろん、貴重品・カメラ対策は万全に。手ごわい相手ですからね

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