HOME >  ラブ >  乙女ノ姿シバシトドメム
 
乙女ノ姿シバシトドメム
Vol.13
乙女、告白の真の目的を見誤ることなかれ
今月の独りよがラー
好きになって、告白して、私を思う彼を思う…彼女にとっての恋愛はこれがすべて。一度ディープな恋愛に足を突っ込んでしまえば世界が変わるかも。周囲はぜひ手助けを!
今月の独りよがラー
今月の独りよがラー
Profile
瀧波ユカリ
漫画家。1980年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。月刊アフタヌーンで4コマ漫画「臨死!! 江古田ちゃん」を連載中。全裸で生活する江古田ちゃんの日常をリアリティーある筆致で描き、女性の支持を集めている。
 5月23日から、単行本第3巻が販売中。
臨死!!江古田ちゃん

 いい陽気ですね。この季節になると思い出す、10年前の春の珍事。

 大学に入ってすぐに属したグループは、皆恋愛経験のほとんどない女子校出身者(と共学出身の私)。いまだ物陰から見つめる、どこが好きかを語り合うなどズブの恋愛素人っぷりを大いに発揮、5月のキャンパスを見苦しくかけずり回っていた。そんな折、Aちゃんが息巻いた。「先輩に告白してくる!」。おおお、と一同盛り上がりつつ、内心そりゃムチャだろうと思っていた。Aちゃんの片思いは完膚なきまでに一方的で、相手はほとんど彼女のことなど知らないのだから。しかし乙女の覚悟に水を差すのも面倒なので、大丈夫、Aちゃんなら絶対OKだよ!と適当なことを言って送り出した。

 5分ほどで、Aちゃんは帰還した。多幸感に全身を紅潮させ、サウナあがりのようにほうっとしている。ワッと群がる私たちに、Aちゃんは歌うようにつぶやいた。「伸びるの、待っててくれるって」。え、何を?

 「私の髪が肩まで伸びたら、付き合ってください」。Aちゃんは、そう言ったという。小学生のころに吉田拓郎の「結婚しようよ」を聴いて以来、告白はこれでいくと決めていたのだそうだ。ちなみに彼女の髪はショートボブで、肩まで伸ばすには3カ月はかかる。対する先輩の返事は「じゃあ伸びたころにまた声かけてよ」。…それって、待っててくれる、とはちょっと違うんじゃないの? 第一、拓郎の歌はプロポーズで告白とは違うよ?とAちゃんに言える勇者はいなかった。

 3カ月後、気付けば疎遠になったAちゃんは、遠目に見る限りでは相変わらずのショートボブ。そうか、その長さなら、いつでもあの告白ができる。そして殿方が自分を待っているという夢をいつまでも見ていられる。邪推かな。でも、決して嫌いではないのです、そんな独りよがりなからくり、私も。

[情報掲載日:2008.6/4]