「シーアリングをするわよ」と、オレンジでホビーファームを営む友人のパットから待ちに待った連絡が来た。シーアリングとは、“羊の毛刈り”のこと。オーストラリアは世界有数の羊毛輸出国で、羊の数は人口の約4.7倍の9600万頭。この膨大な数の羊には専属の“散髪屋”がいて、彼らのことを“シーアラー”と呼ぶ。
羊の毛刈りは観光用にショーとしてツアーに組み込まれていることも多いので、見たことがある人もいるだろう。ただ、ショーだと毛を刈られるのは1、2頭なので私は物足りなく感じていた。もっと次から次へと刈る様子を見たい。だからパットに、「羊の毛を刈るときは呼んでね」とお願いしていたのだ。小屋へ行くと、ご近所の羊たちも含めて30頭ほどが集められていた。あとはシーアラーの到着を待つばかり。パットいわく、「現役を引退しているけど、彼の腕は確かで、トゥルーブルー(本物のオージー)よ」とのこと。そこへシーアラーが登場。確かに年は取っているが、体格の良い陽気なおじいちゃんだ。電動モーターに大きなバリカンを取り付けて、準備は万端。
バリカンのモーターが鳴りだすと羊たちはおびえだした。でも、嫌がる羊を運び出すのはお手の物。両脚で羊の動きを封じ込み、まず首元からおなかにかけて縦にサーと刈って次に横に刈っていく。内側の毛は真っ白でとてもキレイだ。あっという間に1頭終了、毛を刈る前の半分の大きさになった。シーアリングは重労働、10頭目ぐらいでシーアラーは汗だくに。でも、最後の1頭まで手際よく刈り取っていった。
本日の羊たちは高級ウールで有名なメリノ種ではなく、実はラム肉として食べるのが目的の品種。今日刈り取った彼らの毛はじゅうたんなどにするが、次回彼らに会う日は食卓の上かもしれない…。