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カイシャの小羊

幼児虐待のニュースに思う

ニュースにならず埋もれていることにこそ、もっと目を向けて!

最近また幼児虐待のニュースが耳に入るようになった。

先月の7歳の男の子を死亡させた夫婦に続き、先日は2歳の幼児を殴る蹴るは当たり前で、挙げ句の果てはオーブンに入れてスイッチを入れた。そして凍るほどの寒さの夜、外に放置。しかも生ゴミのゴミ箱に入れてビニールで蓋をしたという。

しかしニュースになるのは死亡事故の場合がほとんどで、日常の虐待はニュースにならない。

ストーカーが恋人同士の痴話喧嘩だからと警察が関与しないというのもひどい話だが、それよりタチが悪いのは、虐待は被害者が子どもや幼児(乳幼児)で、だれにも被害を訴えられないことだ。

たいてい死亡事故が起きると、後から近所もうすうす知っていたことが判明する。

子どもがいつも怒られていた声がした。服が何日も同じで汚かった。近所の人が「あれは、やってる」と思って警察や児童相談所や保健所に通報する場合もある。しかし、せっかく指導員がその家に注意に言っても「しつけです」と言われて引き下がるケースも多い。

先月亡くなった7歳の男の子の家にも指導員が訪ねていたそうだ。不憫なことに、その男の子は親をかばって「ボクが言うことを聞かないからお父さんは叱るんだよ。悪いのはボクだよ」と言ったそうだ。

かつて私が取材に行った内戦後のアフリカで、両親を殺されて孤児になった子どもが口々に私に訴えて来たことがある。「ボクが言うことを聞かなかったから、お父さん、お母さんは戦争で殺されたんだ。悪いのはボクだよ」と。

子どもは親に全信頼を寄せているのだ。虐待のニュースで子どもが親をかばうことは本当によくあるという。

私がドキュメンタリーのディレクターをしていた頃に、虐待児を親から一時的に離すシェルターの役割をしている家に長期取材をした。まだ虐待の傷が身体中に生々しく残る子ども達は、それでも親が面会に来る日を楽しみに待っていた。でも、外に傷が無くて、口の中の舌や性器の部分にタバコをつけられた焼け焦げが残る小学生は違っていた。
虐待を受けた子どもでも、幼児の頃や虐待を受けて数年は、状況がよく判らないのか、虐した親に対し憎しみは抱かないようだ。しかし数年経っていたり、状況が理解できるようになると、一気に憎しみに変わる。

そのタバコの焼け焦げが残る小学生は、親を憎み、そこから世の中を憎み始めていた。小学校1年生の時からそのシェルターに来ているという彼は、当時、小学生3年だったと思う。彼はその頃、よく指導員や学校の先生に嘘をつくようになっていた。母親代わりの園長は「ここからが正念場。今、きちんと愛情をそそがなければ一生、憎しみの人生です。そして、いずれ我が子を持った時に、また虐待をしてしまうのです」と語っていた。

その子をそれから一年間にわたり取材をした。1年経って、私たちから見ても、大人になつくような仕草をするようになった彼だが、虐待を受けた子どもの心の闇は深いと園長は言う。

ニュースにならないことは、日常にたくさん埋もれている。虐待はその一つかも知れない。私たちは、社会の中にいて埋もれていることにこそ、もっと目を向けなくていけない、と切実に思う。

田原敦子さん [情報掲載日:2010.03/17 09:30]  | コメント (2) | トラックバック (0)

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コメント(2)
こたママ
2010.09/24 08:48

虐待のニュースを耳にすると本当に心が傷みます。。
虐待を受けてもなお、子どもは親を守ろうとする…その子供にとって、自分の親はその人しかおらず、その人がいなくなったら生きていけないということを分かっているのでしょうね。子どもには何の罪もないのに…。
ニュースで目にするのは本当に氷山の一角で、今この瞬間もどこかで子どもたちが虐げられていると思うと、心が締め付けられます。
私も今年一児の母親になりましたが、お腹を痛めて産んだ、こんなにも可愛いわが子を痛めつけるなんて、その親の心理は理解できません!怒りすら覚えます。
記事にもあるように、周りが気づいているのにも関わらず、最悪の結末になるケースが多いように思います。親の権利よりも、無知でか弱い子どもを守ることを優先にして、もっと強硬的に出て良いと思います。それでなければ、こうした事件は一向に減らないと思うからです。

いちごちょこ
2011.05/20 23:39

2歳男児の母、平日は保育園に預けて仕事をしています。私も同じく、この手のニュースを見ると本当に悲しいです。どうして、何も言えない、何も抵抗できない赤ちゃんに暴力が振るえるんだろう!?と思います。
でも、私自身も普段の仕事や家事に疲れていると、ついイライラしてしまい、子供に「おやつー」とかせがまれると怒ったりしてしまいます。子供に腹を立ててしまう気持ちも全く分からない訳でもありません。だからって、子供に当たっても仕方ありません。そんなことをしても、残るのはお互いの傷だけ・・・・・
自分自身も疲れをため込まないように、上手に発散する方法を見つけていくのが重要かな?と思っています。
たとえば私の場合、子供を早く寝かしつけた後に好きな本を読むとか、週末は母親や旦那に子供を頼んで、マッサージに行くとか・・・ですかね。
なかなか思うようにいかない日々ですが、頑張っていこうと思っています。

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執筆者プロフィール

田原敦子さん

“テレビ局のプロデューサー”と聞くと、1分1秒を惜しんで働き、相当強気な人なのかな、なんて勝手な想像をしてしまうけれど、田原さんは“聖母のオーラ”を感じるような、ゆったりとした温かい人。そんな田原さんは、プロデューサーという多忙な仕事にもかかわらず、大学で講師をしたり、マスコミ業界で働く女性の勉強会に参加したりと、信じられないほどパワフル。さらに41歳での初出産で、なんと双子を出産。妊娠、出産の悩みにもズバリ答えてくれるよ。

プロフィール
テレビ朝日に入社し、「スーパーモーニング」などの番組ディレクターとして活躍後、「黒柳徹子・ユニセフ アフリカルワンダ報告」などの特別番組で難民キャンプ各地を報道。1995年、「親の目子の目」で民間教育協力協会会長賞を受賞し、2002年に日本女性放送者懇談会会長を務める。現在、「世界の車窓から」などの担当プロデューサーのかたわら、文化学院で講師も務める。著書に「転がる石はダイヤモンド」(第三文明社)がある。

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