City interview
「自分が見たい時代劇を作ろうと思ったから、
楽しくて楽しくて(笑)」
TEXT 宮田彩未 PHOTO 岡森大輔
映画監督 是枝裕和さん
1962年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。1995年、初の映画監督作「幻の光」により、ベネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞等を受賞。4作目「誰も知らない」が、2004年カンヌ国際映画祭で史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)に輝く。
「撮影中は、早朝3時ごろまで撮影所にいて、朝7時にホテルを出るという毎日。僕は嵐電が気に入ってね、揺れる電車の中でアイデアを練ったりしました。京都は撮り甲斐のある街だから、いつか…ね」
「花よりもなほ」父の仇(かたき)を探す宗左衛門だったが、あだ討ちに疑問を感じ始め…。6月3日(土)からMOVIX京都、イオンシネマ久御山、ユナイテッドシネマ大津で公開予定
http://www.kore-eda.com/hana
 親に置きざりにされた子どもたちの日常を写しとった問題作「誰も知らない」の次に、是枝さんが取り組んだのが、自身のオリジナル脚本による時代劇「花よりもなほ」。父のあだ討ちのために江戸に出てきた青年武士を主人公に、長屋に生きる庶民の生活ぶりや、彼をとりまく人間模様を優しいまなざしで描いています。赤穂浪士の討ち入りなどもからませ、ユーモアもたっぷり。
 「『誰も知らない』を撮っているうちに、虚構の世界を1本やってみたくなってね。ミュージカルかファンタジーか(笑)、時代劇か、と考えたんですけど、刀をさした侍でも戦った記憶がないという元禄時代が面白いなあと思ったんです。この時代の侍は、僕のイメージでは“地方公務員”。親方日の丸にのっかってるんです。今とダブる部分もありますね」と語る是枝さんの目はひたと相手に向けられ、何だか彼こそ侍みたい。でも、ほほ笑むと、その大きな目が一転して、とても親しげに。完成披露試写会では観客の笑いに包まれ、とてもうれしかったそう。
 面白かったのは、V6の岡田准一演じる主人公像。剣術がダメで、体育会系でなく文科系、あだ討ちなんて本当にできるの?と、ハラハラさせられます。「僕ね、マッチョは苦手なんです(笑)。赤穂浪士の事件だって、当時の人みんなが美談だと考えていたかどうか。だから、あだ討ちもさらっと描いてみたかったんですよ」
 主な舞台となるのは、松竹京都撮影所にひと月半かけて作られた長屋のオープンセット。「作るのに費用と手間がかかるからだと思うのですが、傾斜のあるオープンセットは最近あまり見かけなくなりました。でも、長屋の間に作った坂道や階段を背景に、岡田くんを撮ってみたいということだけは、絶対譲れませんでした。場面に奥行きが出てきますから」
 是枝さんのこだわりは、脚本にも。「脚本を書きながら撮影を進めたので、イメージは当初どおりでも、ディテールはだいぶ変わりましたね。あちこち書き直して、その朝に張り出して…。僕は楽しんでたけれど、役者さんは大変だったでしょうね(笑)」
 新旧の実力派演技陣のなかで、関西在住の子役・田中祥平には目を見張ったとか。「かわいらしさとともに、子役くささのないうまさがあるんです。役柄の関係性をとらえていて、相手のせりふまできちんと覚えているのには、ほんと驚きましたね」
 今後の挑戦分野も楽しみですが…。「自分が見たいラブストーリーを作ってみたいなあ。キャストのみんなは『花よりもなほ2』をやろうと言ってましたけど(笑)」
情報掲載日:2006.6/7