「こういう作品に出られて役者としてうれしい」。ドラマ、映画、舞台と、フル稼働の阿部寛さんが、満を持して主演する映画「歩いても歩いても」。妻子を連れて実家に帰った夏の一日、年老いた両親と姉家族たちと過ごす、ありふれた家族の風景が描かれている。「大きな事件が起きるわけでなく、ささいだけど、家族同士の身につまされることや共感できるところが多い。クスッと笑えるところも無理やりじゃない。押し付けがましくないのに、何かが響く」。誰もが自分に重ね合わせ、懐かしい感覚の中で、笑えて泣ける。
「良多(役)は、不慮の事故で亡くなる優秀だった兄と比べられて、期待されずに傷ついたと思う。おやじに反発して跡取りになれなかったのもつらい。男として分かる部分がありました」。息子と父親の微妙な空気の中で、母親の存在が頼もしい。
「母親は家庭の主だよね。息子にとっては、やっぱり母親がいるから家にも帰りやすい。おやじだけだとしゃべるネタもないし(笑)。母親も強いけれど、息子に頼りたい、そういうところがあると思うんだよね。自分の母親ともダブりました」
劇中では母親(樹木希林)と姉(YOU)がかしましい。「とりとめのない2人の会話が、いい空気をつくってくれている。男はそこに帰ってきても、仕事しか頭にないからしゃべることがない。だから女性たちがしゃべってくれてると、自分は入らなくても居心地がいい。女の人に救われてるんですよね。女性の器用なコミュニケーション能力はすごい」
“人生はいつもちょっとだけ間に合わない”という作品のテーマがせつない。「子どもに頼らざるを得なくなる、そこでやっぱり親の老いを感じますね。分かってはいるんだけど、目の前のことが忙しいし、家族には照れや甘えがあるから、気持ちを伝えなかったり、約束もつい後回しになって、一番近くて遠い存在になっちゃう…。だから家族にこそ、強制的に行動を起こすことが大事だ、とすごく感じています」
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今週のインタビュアー
佛願麻美さん
真っすぐな力強いまなざしが非常に印象的でした。阿部さんの“何事にも真剣に取り組む生き方”を見習って、私も自分らしい魅力を築いていきたいと思います。 |
ここからは、シティ読者の佛願麻美さんに質問をしてもらいました。
佛願 お休みやリフレッシュにはどんなことをされていますか。
阿部 スポーツクラブによく行きます。しゃべらなくていいから(笑)。でも“役者をする”こともリフレッシュになっているんです。3カ月くらい集中して役になりきって、終わったら次。過激な役も多いので、普段の自分はさぼりたくなる(笑)。
佛願 その中で自分らしさを失わないために心がけていることはありますか。
阿部 妥協したくない、自分にうそをつきたくないですね。社会に出るとそうもいかないことも多くて、流されたりしますけど、心の中ではうそのない生活と仕事をしたいと思っています。
キャスティング・文/かしわぎなおこ(モアナ・サンライズ)
撮影/齋藤ジン ヘアメイク/丸山良 スタイリスト/土屋詩童
衣装協力/パルジレリ〈コロネット TEL:03(5216)6521〉 |