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「ぐるりのこと。」
原作・脚本・編集・監督:橋口亮輔、出演:木村多江、リリー・フランキーほか
■6月7日(土)から、シネマライズ、シネスイッチ銀座ほか全国公開(配給/ビターズ・エンド)
(c)2008「ぐるりのこと。」プロデューサーズ
http://www.gururinokoto.jp/
「ぐるりのこと。」
この10年の犯罪史と並行しながら、
うつに苦しむ妻と夫の歩みを見守る

 橋口亮輔監督の映画を見るたび、他の映画の女性像が甘ったるく、うそっぽく見えてしまう。それは彼の描くヒロインが男性目線で見た理想の女性像とか、理不尽なことを優しく包み込む母性などまるで持ってないからだ。監督が「僕の映画のヒロインは僕自身」と言っていることも大きいと思う。前作「ハッシュ!」の、夫はいらないが子供はほしいと切望する、私生活にだらしないヒロインも実にリアルだったけど、6年ぶりの新作「ぐるりのこと。」の祥子も痛々しいほど身に迫る。

 祥子はセックスする曜日を決め、夫の事情に構わず、「今日はする日でしょ」と主張してしまう、きまじめな女性。妊娠を機に結婚し、子供が生まれたら幸せになれると漠然と考えていたところ、子供の死という不測の事態に遭遇。職場で後輩から理不尽な責めを受け、上司や同僚に助けてもらえなかったこともあり、うつ状態に陥ってしまう。自分の考えていた人生設計から外れていく焦り、正論を主張してもはね飛ばされていく挫折感を木村多江さんが切々と表現していて、とても痛い。

 それでも映画が暗くならないのは、いいかげんだけど、妻のうつに過剰に反応せず、静かに経過を見つめる夫、カナオの存在が大きい。ベストセラー「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」の原作者、リリー・フランキー氏が演じているが、ひょうひょうとしたたたずまいはさすが。

 カナオが法廷画家という設定も興味深い。彼の目を通し、1993年から10年間、日本を震撼させた犯罪者たちの公判の断片を見つめることになるのだ。子殺しの犯罪者が多いのは、弱いものいじめの風潮が強くなっていった10年だったからだろうか? 
(映画ジャーナリスト 金原由佳)

「緑響く」(1982年、長野県信濃美術館 東山魁夷館蔵)
「緑響く」(1982年、長野県信濃美術館 東山魁夷館蔵)

生誕100年 東山魁夷展

代表作品のほとんどが集結
清らかな透明感を感じて

 戦後日本を代表する風景画家、東山魁夷(1908年〜1999年)。ファンはもちろん、まだ東山芸術に触れたことがないという人も、その魅力を存分に味わうことのできる展覧会。代表作といわれる作品のほとんどが会場に集結。本制作101点、スケッチ・習作53点の総点数154点という過去最大の規模で展示されています。彼が11年にも及ぶ期間をかけて作製した、奈良・唐招提寺の障子画群の一部も公開。
 実物の風景を眺める以上に、その場の澄み切った透明感が伝わってくる作品群。眺めているうちに風景の中に引き込まれ、自分までもが清らかな気持ちに包まれていきます。今週末までなので、まだの人はぜひ。

5月18日(日)まで 東京国立近代美術館
アクセス/東京メトロ東西線竹橋駅徒歩3分 開館時間/午前10時〜午後5時(木・金・土曜は午後8時まで、入館は閉館の30分前まで) 入館料/一般当日1300円 
TEL 03(5777)8600ハローダイヤル
http://higashiyama-kaii.com/

book
「赤毛の若い娘(ジャンヌ・エビュテルヌ)」(1918年、個人蔵)
「赤毛の若い娘(ジャンヌ・エビュテルヌ)」(1918年、個人蔵)
モディリアーニ展

 独自の様式の肖像画が印象的な、エコール・ド・パリを代表する画家、アメディオ・モディリアーニ(1884年〜1920年)。国内では過去最大規模、世界10カ国以上から選び抜かれた作品約150点を展示しています。代表作はもちろん、初期の作品など、今まであまり知られることのなかった作品が多数。その変遷とともに、モディリアーニ芸術の全容が一望できます。

6月9日(月)まで 国立新美術館
アクセス/東京メトロ千代田線乃木坂駅6出口(美術館直結)・日比谷線六本木駅徒歩5分、都営地下鉄大江戸線六本木駅徒歩4分 開館時間/午前10時〜午後6時(金曜は午後8時まで、入館は閉館の30分前まで)、火曜休館 観覧料/ 一般当日1500円 
TEL 03(5777)8600ハローダイヤル
http://modi2008.jp/

book
「ジュール・ヴェルヌの海」(2006年)
「ジュール・ヴェルヌの海」(2006年)
冒険王・横尾忠則

 世田谷にアトリエを構え、分野を超えた縦横無尽でおう盛な創作活動が話題を呼んでいる、横尾忠則。グラフィックデザイナーとして活躍していた60年代のグラフィック原画から冒険的物語がテーマの最新作まで、およそ700点を一挙に展示。大胆不敵でいて、かつ驚くほど緻密(ちみつ)な仕事ぶりを知ることができます。めくるめく“横尾ワールド”を堪能して。

6月15日(日)まで 世田谷美術館
アクセス/東急田園都市線用賀駅徒歩17分(同駅発美術館行きバス美術館停下車徒歩3分) 開館時間/午前10時〜午後6時(入場は閉館の30分前まで)、月曜休館 観覧料/一般1200円 
TEL 03(5777)8600ハローダイヤル
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

[情報掲載日:2008.5/14]