この映画のポスター、薄明かりのライトを背に、フローリングの床で抱き合う男女の姿を写したものなのだけど、主人公・みるめを演じる松山ケンイチくんの顔はなんとか識別できても、彼の恋人、永作博美さんの顔は見えない。いやあ、これ、配給会社の戦略ですね。あえてヒロインの顔をぼやかすことで、観客はおのずと、「この女性は私!」と幻想を抱くことができるのだから。
そもそも美青年の19歳の美大生が20も年上の女性と恋にハマるという設定が30代女性の願望というか、妄想が入っていますからね。ただ、山崎ナオコーラの原作は、東京の田園都市線沿線を舞台に、主人公の心理として「ややダサいおばさんだけど、かわいそうだからオレ、付き合ってあげているんだぜ」と終始優位に感じながらも、実は彼女がいなくなるとどうにもならなくなる…という身もふたもない姿を描いていたのが、映画版では周囲に田畑しかない地方の設定に変えられていて、まるで違う恋愛模様となっている。
永作さん演じる美大の講師・ユリはすてきなリトグラフを製作しているのだけど、おそらくこの地方都市では仕事としては成立していなくて、東京で売れっ子になるには物理的に遠い場所にいる。年齢的にも子供を産むかどうか、そろそろ決断の39歳。そんなとき、人生がまだまっさらで、キラキラしている男の子と出会う。さあ、どうする?
実はこの映画はみるめの目線でつづられているので、ユリの感情はまったく描かれない。永作さんは徹底してポーカーフェイスで、その潔い演技はとても好感が持てるのだけれ
ど、みるめに自分の感情を1ミリも読み取らせない姿勢はまさに大人の女の手練手管ですね。それにしてもこのユリ、寒い土地柄か、いつもストッキングの上に靴下を重ねばきしているのだけど、このぶっちゃけな自然体に魅力を感じる男子、本当にいるのかしら(いてほしいけど)。松山くんに確認したら、「靴下? 見ていませんでした」という回答でしたが。
(映画ライター 金原由佳)