ニューヨーク屈指の女性シェフ、ケイトは人づきあいが超苦手。心配したオーナーは彼女を週に1度、精神分析医に通わせるが、効果が上がっていない。そんな彼女が唯一心を許している妹が交通事故で他界し、めいのゾーイを引き取ったことから彼女の人生は大きく変化し始め…。
日本でもヒットしたドイツ映画「マーサの幸せレシピ」をハリウッドがロマンティック・コメディーにリメイクした。完ぺき主義な上に、他人を信用しない女性シェフが心に傷を負っためいや、陽気なイタリア料理シェフといや応なくかかわることで人生の扉を次々に開いていく物語の大筋はほぼ同じ。が、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じるヒロインが心を閉ざすことになった原因がきちんと語られているし、天才子役と評判のアビゲイル・ブレスリン演じるゾーイのキャラが際立っているので、「ん、なんで?」とひっかかる部分なく物語に反応していける。特にアビゲイルの演技は出色! 子供なりに衝撃と向かい合い、人生を立て直そうとするゾーイの複雑な心模様をリアルに表現している。また非常に個人的な見方だが、ケイトの心を乱す副シェフ、ニックを演じるアーロン・エッカートがチャーミングなのがなによりもポイントが高い。「押しと引き」を心得た男は、女性の人生に甘美なデザートとなるものなのだ。
心の周りに壁を築くケイト、人生が崩壊しかけたゾーイ、人生をエンジョイする開放的なニック。三者が形成する人間関係がさまざまに変化し、やがて互いに欠かせない存在となる様は、素材、腕、タイミング、愛情などが相互に作用して絶品料理を作る過程に似ていなくもない。何かが欠けても匠(たくみ)の味わいにはならない一方、レシピにないスパイスを加えることで絶妙な味わいが生まれもする。トライアル&エラーを重ねながらおいしい料理作りに励んでみるのも人生のだいご味。幸せにマニュアルはないが、自分なりの“幸せのレシピ”を完成させることはできるのだから。 (ライター 山縣みどり)