

監督:ヤン・イクチュン 出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファンほか
シネマライズほか全国順次公開中(配給/ビターズ・エンド、スターサンズ)
公式サイト
http://www.bitters.co.jp/ikimodekinai/
愛することを知ったチンピラの再生が
切なく、悲しく、やがて心が温まる
ヨン様人気に端を発した韓流ブームは去ったけど、韓国映画の底力たるや恐るべし。と、思わせたのが俳優ヤン・イクチュンの監督デビュー作である本作だ。
冒頭でまず目が点!? 繁華街で女性が男性からボコボコに殴られているところに主人公が登場。白馬の王子っぽくケンカの仲裁かと思いきや…。まず男性をのした後、倒れている女性の髪をつかんで「やられっぱなしでいいのか、クソ女」と顔面を激しく殴る。怖い、怖すぎる。キム・ギドク監督の「悪い男」(傑作ラブストーリー。必見!)以来の凶悪男の名は、サンフン。気に入らないと暴力に訴え、ツバを吐き、突っ張って生きるチンピラだ。このコワモテの男が気の強い女子高生ヨニとの出会いをきっかけに閉ざしていた心を開き始める。
サンフンが野獣のように生きる理由は徐々にわかる。幼いころに父が泥酔して母親と妹を刺し殺すのを目撃した彼は、父親をゆがませた世間をも恨んでいるのだ。言葉にできない感情を暴力でしか表せない、サンフンのひりひりとした心情に切なさすら感じる。一方のヨニは、正気を失った父親と荒れる弟の面倒を見る日々に絶望している。「家族」のしがらみに複雑な思いを抱く似た者同士が魂レベルで共鳴し合う姿が自然で、心にしみる。ある事件が起き、ヨニのヒザでサンフンが胸のつかえをあふれ出させるシーンは思わずホロリ。心の傷と向き合ったサンフンの変ぼうがリアルなのは、監督が自身の経験を重ねたせいもあるだろう。誰かの愛を感じられれば、自分も愛せて、周囲ときちんとつながっていける。人間関係の基本を見失ったサンフンが再生する過程を貧困と暴力、家族の愛憎、純愛、友情を織り交ぜて描く、監督の筆致の鋭さには脱帽。簡単に問題解消する甘ったるい家族ドラマにうんざりしている人には特におすすめ。(ライター 山縣みどり)
[ 活躍する女性4人のcinema essay ] | 2010.03/24 09:30
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