

監督:ジョン・パトリック・シャンリィ、出演:メリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマンほか
3月7日(土)、TOHOシネマズ シャンテ/Bunkamuraル・シネマほか全国公開(配給/ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン)
公式サイト
http://www.movies.co.jp/doubt/
根拠のない疑惑が生み出す結果を考えさせる人間ドラマ
木からリンゴが落ちるのを見たニュートン少年が「なぜ落ちるの?」と考えたのが、万有引力の発見につながったという逸話は有名。疑問を持つのはいいことなのだが、一字違いの“疑惑”となると別。何かを疑うことは実にあいまいで、怖い結果を生むことにもなりかねない感情と痛感させられたのがこの寓話(ぐうわ)的ドラマだ。
公民権運動まっさかりの1964年、アメリカ。カトリック教会が運営する学校の中年シスターが若き神父が試験的に入学させた黒人生徒に性的虐待をしていると疑ったことから、関係者の心にさざ波が立ち始める。生徒に恐れられている厳格なシスターが人気者の神父を毛嫌いしていることがすぐに明らかになる。しかも教会における男女格差も明確にされ、神父の糾弾は不満のハケ口かもと思わなくもない。裏付けのない疑惑を妄執的に追及するシスターをメリル・ストリープが鬼気迫る迫力で演じ、熟練のセリフ回しに圧倒される。彼女がある種の正義を遂行する気か、敵を追い落としたいのか? 見ている側は混乱するが、それは戯曲を書いた監督の狙いだろう。また人種問題や同性愛者軽視などのテーマも巧みに取り入れられていて、一面的ではない幾層もの人間の心のひだが描かれている点も深く考えさせられる。根拠のない疑惑から疑心暗鬼となった経験のある人は、少なくはないはず。例えば恋人の浮気を疑って、携帯メールをチェックしたあげくに自己嫌悪に陥ったり…。疑惑というあいまいな感情につき動かされ、モラルの一線を越えたあとに何が起こるのか? イラクの大量破壊兵器隠ぺい疑惑でスタートした戦争にヒントを得たという本作は、世界中の人々に大いなる疑問を投げかけてくれた。
(ライター/山縣みどり)
[ 活躍する女性4人のcinema essay ] | 2009.03/04 09:00 | コメント (0) | トラックバック (1)
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