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2006年09月11日
使う人が悪いんじゃなくてデザインが悪いんだ
このようなサイトを運営していると、「機械には弱いからよくわからないんです」「不器用だからこういうのはうまく使えないんだよね」という声をよく聞きます。でもその内容を聞くと、「それは機械の方が悪いだろう!」「そんなのわからなくて当然。あんたは悪くないよ」と思ってしまうことも少なくありません。いちデザイナーとして、この件について考えてみました。
●身の回りにたくさんある「間違えるデザイン」
命にかかわるような事故とまでいかなくても、日常生活の中で、道具を使っていて問題が起こったり、そもそも使い方がわからなかったり、間違えた使い方をしてしまったり、ということはよくあるのでは。たとえばざっと身の回りを見渡したところ、以下の様な例がすぐに見つかりました。
・USBポートの形
PCを使っていると頻繁に抜き差しするUSBポート。これは長方形の対称な形をしているので、反対の向きに入れてしまって中の端子がつっかえてしまう、ということが頻繁にあります。PCの背面のポートに手探りで差そうとしてもかなり困難なので(しかもこういったことはよくある)、そのたびに『これデザインした奴出てこんかい!』などと呪詛の言葉を吐きながら本体を引きずりだして作業をする羽目になります。これを無理に差そうとして、本体側の端子を折ってしまったというケースもあるのでは。USBメモリーなどで使う機会も増えているだけあって、ストレスを感じている人も多いことでしょう。
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代表的なUSBポートの例。たとえケーブル・ポートの双方の向きを確認したとしてもまだ間違えてしまうので、いったん差して入らなければひっくり返して差すという感じ(ですよね?>皆さん)。前面にあればまだマシだけど、背面のポートに差すときは手探りでできないので非常にめんどくさい。
よく似た用途を持つポートとして「Firewireポート」がありますが、こちらは非対称な形をしているので、決まった向きにしか入らないようになっています。家電で使われるということも想定して作られたという規格だけに、十分使い勝手に配慮されていて、“間違えない”デザインだと思います。
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代表的なFireWireポートの例。これなら間違えて差すのは物理的に不可能です。USBが“PC的”な発想で作られたとすると、こちらは“家電的”な発想で作られた、と言えるかもしれません。ちなみに、USBの規格を作ったのはコンパック/インテル/マイクロソフト/NECで、FireWireの規格を作ったのはアップルコンピュータです。この名前を見ると、なんとなく納得してしまいます。
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ケーブル側の端子の先部分がプラスチックになっているので、USBに比べて「スルッ」と円滑に差し込めます。
・メモリーカードリーダー
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普通の使い方をすると本体を上から見る視線になるので、どこにどのカードを差せばいいのかわからないし、どっち向きで差せばいいのかということもわかりません。数多くのメモリーカードに対応するのなら、ひと目でわかるようにしておいてほしいところ。
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よく見ると下の方に「SD」のアイコンがありますが、こんな位置についていても全く意味をなさないことだけは一目でわかります。
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こちらも同じメーカーの製品。最初からこのように上面にアイコンが記載されていれば一目瞭然なのにね〜。どっちが使い勝手がいいのかは言うまでもないでしょう。
・ニンテンドーDSの電源ボタン

ニンテンドーDSの電源ボタンはこの赤丸の位置についています。右側の同じ高さの位置にはスタートボタンとセレクトボタンがあり、デザインの意味的には「スタート・セレクトボタンと並列」ということになるのでしょうか。
でもちょっと待っていただきたい!
スタートボタンはゲーム中では“スタート”という機能を持つことはもちろん、ポーズ(一時停止)機能などに割り当てられることも多く、比較的使う機会も多いですが、電源ボタンは本体の起動時と終了時に使うのみ。使用頻度の違うボタンが意味的に並列のデザインになっているのは問題があるし、親指を伸ばすだけで届く非常に押しやすいこの位置にあることで、ゲーム中に間違えて電源を切ってしまったという人は多いんじゃないでしょうか? ぼくも遊んでいて、ポーズするつもりが間違えて切ってしまい、「せっかくここまでやったのに〜!!!」と叫びそうになったことも数知れず。
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DS Liteでは電源ボタンは本体の側面に移動していて、さらに引っ張る方式に改善されています。これなら間違う心配もなさそう。DSのデザインは明らかにテスト不足だったと思われます。
・ケータイのボタン
特定の機種の写真を出すまでもなく、ケータイのボタンは悪い例の見本市といってもいいのでは。一見しただけでは機能と関連性のわからないボタンが羅列されていて、しかもその操作のしかたも一定じゃなく、「短く押す」「長く押す」など、いろんな要素が詰め込まれています。もちろん多機能化に従って、仕方なくこのような操作方法が取られているのはわかるけど、最も日常的にあらゆる層が使うという電子機器のわりには、未だにマニュアルを読まないと機能のほとんどが使えないというデザインなのは、デザイナーが仕事を放棄した(または放棄させられた?)と言われても仕方ないんじゃないでしょうか。
・<番外編>事務所のドア
これは電子機器じゃないけど、パーティションで区切られた各部屋に設置されたドア。いまぼくがいる部署に入るためのドアは内開きなのに、隣の違う部署に入るためのドアはなんと外開き。見た目は同じなのに開き方が違う。ここに入ろうとするたびに間違えて引いてしまって開かなかったり、「このドアは内開きだったっけ、外開きだったっけ…あ、ウチの部署とは反対だから外開きか」と、約0.5秒考えないといけないわけです。見た目が同じだけに混乱度も大きく、その罪も大きいと言えます。
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何ヶ月経っても全く慣れないんですけど…。押さないといけないのに渾身の力で引いてしまい、大きな音を出してよく恥ずかしい思いをします。
…とまあ、ぱっと目につくだけでもいくつも挙げられるほど、このような「使う人に無用な負担を感じさせるもの」というものがあふれているわけです。説明書を読むのは苦にならないし、むしろ好きな方だけど、よく読んだ上でも「あれ、ここはこうだったっけ?」と迷ってしまうことも少なくありません。
●想定外の使い方が重大な結果を引き起こすことも
ま〜でも上に挙げたようなことは、たとえ間違ってしまったとしても少しイライラするだけで済んでしまうこと。しかし工業製品の中には、ちょっと使い方を間違えただけで、致命的な結果をもたらすものが意外なほど身近に多くあるということが、最近の一連の工業製品にまつわる事故のニュースで再認識されてきました。
例えばシュレッダーで指を失ったという事故について、これらの道具とシュレッダーの件に共通するのは、起こった結果に対して、その製品のデザイン自体が大きく関わっているということ。「ここの構造がもう少しこうなっていれば、このようなことにはならなかったのに」ということが大きな要因のひとつであることは間違いありません。まだ記憶に新しい六本木ヒルズの回転ドアの事故にしても、人間が当然起こすであろう“失敗”を、作った人が少しでも想像することができたら防げたという事故です。
工業製品はその構造の複雑さから、それを使ったことでどんな結果をもたらすかイメージしにくいことがあります。例えば包丁なら、握り手以外の部分は鋭利な金属で出来ていることから、握り手以外の部分に触れると危険であり、またそれを使えば「ものを切る」ことができるというのはひと目でわかるし、幼児であっても少し教えるだけで容易に理解できるものだと思います。
それに対して件のシュレッダーなどは、全く予備知識のない人が外見だけを見て、その用途を理解することは難しいです。直方体の上部に開口部があることから、そこに何かを入れることができる、ということまでは理解できたとしても、そこに指を突っ込んで動作させてしまうと、どうしようもなく悲劇的な結果に結びつく、ということまでは想像できるものではありません。「こうやったらこのような結果になる」という結びつきがイメージしづらいために、間違えて指を入れてしまうということも当然起こりうることです。
また、包丁は見るからに危険なものなので注意を払いやすいが、シュレッダーはそうではないので注意を払いづらい、ということもあります。日常的にシュレッダーを使っている人がその危険性について十分認識していたとしても、例えば友人が子供を連れてきたときに、台所にある包丁は片づけたとしても、自分の部屋にあるシュレッダーを片づける、もしくは電源が入らないようにコンセントを抜いておく、といったことまで気が回らないということもあるのではないでしょうか。
シュレッダーは、そのような状況も当然想定してデザインされるべき種類の製品です。このような事故が起こりうるということを想像できなかったデザイナーの責任は重大だといえます。
●使う人間は悪くない!
いくら使う人が注意をしていたとしても、このように道具を使う上では必ず間違いは起こります。必ず間違えるから、その間違いをどう防ぐか、損失を最小限にするか、というのが工業デザインの最も重要な部分のひとつなのです。使い方を間違えて、「自分はこの手の機械には弱いから…」などと考えている人は、自分が悪いのではなく、間違えるようなデザインをしている製品の方が悪いのだ、と胸を張るべきだと思います。消費者の逆ギレではなく、より使いやすい製品が世の中に増えるためには、そのような「間違える製品」を作るようなメーカーを見限るということも必要なんじゃないでしょうか。メーカーとしては、「マニュアルをよく読んでお使い下さい」などと責任逃れの表示をするだけじゃなく、「マニュアルを読まなくても使える、しかも間違えない」ことが当たり前だというくらいに、デザインに力を入れていただきたいです。
投稿者 dennou : 2006年09月11日 18:00
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コメント
USBポートの話、うなずいてしまいました(^^)
もう少し回りのいろんな人の意見を聞いてから発売していたら、こんなことにはなっていなかったでしょうね。
私の場合、USBポートをよく使うのですが、PCに3つあるUSBポートの内、2つがゆるーくなってきて、これも困っているところです(^^;
投稿者 spring : 2006年09月12日 12:17
USBのユーザビリティに関しては同意しますが、
シュレッダーの事故を同じレベルで考えるのは如何なものしょうか・・・・
確か事故を起こした機種のほとんどは、家庭用ではなく業務用だったと思います。
シュレッダーなんて、刃物がついているのだから危険な事はあたり前です、
そして、沢山の紙を効率的に処理することを目的として作られている業務用ならばなおさら。
この場合、業務用のシュレッダーで指が切れるかもしれないという事は、
シュレッダーを買ってきて使っている人物ならば知っていて当たり前です。
そんな危険なものを、子供がいる場所に設置するのが問題なんではないのでしょうか?
というか、業務用と名のついたものを使う以上、使う人の責任でしょう・・・
投稿者 F : 2006年09月17日 06:57
「危険である」事を誰でも認識できるようにする事。
そして誤った使い方をしても事故を起こさないようにする事。
デザインにはこれが大事だと思うのです。
そこには「業務用」「家庭用」という違いはありません。
労働災害はなぜ起こるのか?
「業務用だから」安全についておろそかにしてよい、
なんていう道理はないはずです。
「ミスにより効率が落ちる」「ミスにより怪我をする」、
「ミスを減らすには」という目的を考えれば、
ユーザビリティと安全を同列に考えるのは、
今回の場合は必ずしも間違ってはいないのではないでしょうか
投稿者 しく : 2006年09月17日 14:27
業務用の製品に、子供が悪戯しても安全な機能まで求めるのは、ずれていませんか?
安全に対するデザインの大切さはわかるつもりですが、業務用シュレッダーを子供に使わせて怪我をさせたことは、明らかに使わせた方に非があると思います。
投稿者 安全第一 : 2006年09月17日 16:27
事故を起こしたのは業務用じゃなくて、最近流行ってる家庭用の安価なシュレッダーじゃなかったっけ? 調べました?
ホントに業務用のやつはそもそもサイズがデカすぎて幼児が手を伸ばしても挿入口まで手が届かないです。
それに、業務用のシュレッダーとはいえ指を突っ込んでOKな構造になってるのは明らかにヤバいです(幼児並みに指の細い娘はいます。業務用はフタを開けてブレードに触ろうとしても動作しないので、イタズラのせいで事故が起きたわけでもない)。今までは使う層が限られていたから露見しなかっただけで、問題があることには変わりはないでしょう。
事故が起こったことについて
「なるほど。こういう危険性があるのか」
という視点で見ず、なんでも
「親の教育のせい」
などという精神論で片付けてしまうのでは、なんにも進歩しないでしょうね。なんかそういう風潮になってきてるのはイヤですね。身の回りにある家電は、なんでも洗練されてきた結果、いまのかたちになっているのです。シュレッダーもそういう時期にようやく来たってだけでしょう。使わせた方に非があるかどうかなんて、どうでもいいことです。それを責めて誰か得しますか? 製品をよりすぐれたカタチにして得をするのは、実はメーカーでもあるのです。
投稿者 Bar : 2006年09月17日 22:56
USBって確かに、見るからに安く作れそうなデザインですが、それは本来、その程度で大丈夫だったんだと思います。
6ピンのIEEE1394は比較的大きな電流(30V/1.5A)も流しますから、向き間違えられるとやばい。USBは5V/500mA程度です。
投稿者 Anonymous : 2006年09月18日 00:34
うちのパソコンは、DVDドライブのイジェクトボタンがパネルの中に隠れている上に、トレイが出てくるすぐ横に電源ボタンがあるので、DVDを入れ変えようとして間違えて電源を切ってしまうことが時々ある…。
投稿者 wafu : 2006年09月18日 11:15
横から失礼。
「調べました?」は自分に向かって言ったほうがいいかと思われます。>安全第一さん
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2441457/detail
> 家庭用NSE−501CNとNSE−101CS、業務用IS-300E-K19とIS-388-K19、
> それに富士ゼロックスのLC11とMC11。
家庭用のシュレッダーに関しては、確かに安全基準がマズかったと私も思います。
しかし、業務用となると話は変わるのではないでしょうか。
消費者は買う商品を自由に選ぶことができます。
業務用を買った人はなぜ業務用のものを買う必要があったのか、
子供をいるなら、なぜちゃんと子供の指が入らないような受け口の家庭用を
調べて買わなかったのか。
子供やその教育が悪いとは思いません。
ただ、親の側に配慮が足りなかったものと思われます。
業務用は一度に多くの紙を裁断するため、受け口が広くなるのは当然であり、
また大人の指を想定した安全基準をきちんと設けています。
「かなり細い女性の指」で安全基準を作っても、さらにその安全基準を
下回る指の細い女性は必ず存在します。それに合わせていったら、
家庭用も業務用もなくなり、使いづらいシュレッダーのみしか存在しなくなります。
「幼児並みに指の細い娘」はもちろんいるでしょうが、
この話において彼女は大人であり、「シュレッダーは危険なもの」と判断し、
「危険にならないような使い方」を実行することができるはずです。
シュレッダーにおける大人への安全基準と、想定していない子供への安全基準を
ごちゃ混ぜにして「業務用だから安全についておろそかにしている」と語るのは
間違えていると私には思えます。
この、消費者の選択と責任を「デザインが悪い」でつきつけめていくと、
訴訟大国アメリカにおける「非常識な状況を想定した注意書き」を超えた、
「非常識な状況を想定したデザイン」の実務的に欠陥がある製品しか
出なくなるのではないかと思います。
ちなみに、上記の話はシュレッダーに関する話であり、
USBやその他のデザインについては「まったくもって本文通りだ」と思っています。
それは、それらが「使う層が一般層」であり、
「メリットを損なわずデメリットを改善する」ものであるからです。
長々と失礼しました。
投稿者 sin : 2006年09月18日 11:46
よく見ると「調べました?」の発言は安全第一さんではなく、Barさんでしたね。
失礼しました。
こういう場合は「ボーダーラインの位置が(私にとっては)おかしく、投稿者と本文を間違いやすい」とデザインについて文句を言ってもいいんでしょうか…。
投稿者 sin : 2006年09月18日 12:52
「親とメーカーのどっちが悪い?」という議論は
ちょっとテーマから逸れてしまいますので、
あまりコメント欄を伸ばしたくないのですが、
子供が事故を起こしたら、親自身は(まともな親なら)一番自分を責めているはずですよ。
子供の行動にはすべて親の責任があるのは確かで、
その上で、製品にもちょっとしたデザインの配慮があれば良かったということだと思います。
シュレッダーの件に関しては、
事故が大きく報道されたことで、メーカー側と使用者側の両方に注意を喚起したということが重要だと思います。
メーカー側には、たとえその製品が業務用だとしても、
個人事務所など子供が触れる場所に設置される可能性があるということ。
使用者側には、設置場所や使い方をよく考えないと重大な事故に繋がる可能性があるということ。
両者が再認識することで、将来の無用な事故を減らすことができるのではないでしょうか。
投稿者がわかりにくいデザインてすみません…
改善検討しておきます。
投稿者 電脳 : 2006年09月18日 22:21
メモリーカードリーダーについてはデザイン面での目的が違う商品であることから比較対象にしてはいけない気がします。
シュレッダー(シュレッダーに限らず多くの危険性のある製品による事故も含め)は双方の認識というよりも圧倒的に使う側の認識が足りていないんだと思います。
製品として販売する以上露骨に危険とわかるような部位を作っておけないからこその(販売対象別の)安全対策であり、説明書や本体の注意書き、シール等メーカーとしてはかなりの気遣いが既になされてるわけですから。
投稿者 ton : 2006年09月19日 02:15
