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カイシャの小羊

女の正義感は難しい

正義感の強い女性は職場では煙たがられる。分かっていても、一言いわずにおられない私の友人は、流浪の異動人生を送っている…。

 梅雨のこの時期、大抵の会社では、人事発令なる人事異動が行われるようだ。
 私の勤めるテレビ局でもちょうどその時期を迎え、願っている所へ異動希望が叶って、梅雨空も虹色に見えてる幸せな人。信じられない部署への配置転換にジメジメと泣く人。まさに明暗を分ける一日となる。
 昨日、遅い時間にデスクに電話がかかって来た。彼女は私と同じ42歳。元アナウンサー。結婚して3人の子供の母でもある。30代に手が届いたころ、配置転換でアナウンサーを外されてから流浪の異動人生を送っている。

 「ついに本社からも離れる事になったのよ…」

少しのため息と強がりで笑っている。関連企業への配置転換だそうだ。

 彼女は聡明で美人、竹を割ったような正確。明るい女性だ。そして自分にも人にも厳しい。他局ではあるが政治経済に明るい彼女を、時に便利に、時に友人として私は頼りにしている。でもどこが悪いわけでもないのに、なぜかどの部署に行っても煙たがられるようだ。時間の無駄使いばかりで仕事をしない人、仕事ができない人をどうしても放っておけないらしく、ついついアドバイスをしてしまうようだ。会社のお金を無駄使いする人も許せないらしく、たまのメール交換では「信じられないでしょ!」「許せないわよ!」の文字がよくよく並ぶ。そしてどう相手に言えば改善させられるかを常に考えている。私みたいなめんどくさがりにはマネできない正義感の固まりの彼女である。

 ところが、オヤジも年下男も、女からのアドバイスなんて大嫌いじゃあ〜りませんか!
特に役職的に上司でもない女の説教(に、聞こえるようだ)なんてさ。
これが男性から「ちょっとこのままだとヤバイですよ。○○部長がチェック入れてますよ」なーんてやれば、大人の男も聞き入れてくれるんだろうね。

 最後に彼女が言った。
「バットマンだってやっぱり正義の味方だからカッコいいんだよね。私も負けない」
 私は無責任に頑張れとも言えず、曖昧に笑って電話をおいた。
 女の正義感は難しい。

田原敦子さん [情報掲載日:2005.07/06 11:00]  | コメント (0) | トラックバック (0)

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執筆者プロフィール

田原敦子さん

“テレビ局のプロデューサー”と聞くと、1分1秒を惜しんで働き、相当強気な人なのかな、なんて勝手な想像をしてしまうけれど、田原さんは“聖母のオーラ”を感じるような、ゆったりとした温かい人。そんな田原さんは、プロデューサーという多忙な仕事にもかかわらず、大学で講師をしたり、マスコミ業界で働く女性の勉強会に参加したりと、信じられないほどパワフル。さらに41歳での初出産で、なんと双子を出産。妊娠、出産の悩みにもズバリ答えてくれるよ。

プロフィール
テレビ朝日に入社し、「スーパーモーニング」などの番組ディレクターとして活躍後、「黒柳徹子・ユニセフ アフリカルワンダ報告」などの特別番組で難民キャンプ各地を報道。1995年、「親の目子の目」で民間教育協力協会会長賞を受賞し、2002年に日本女性放送者懇談会会長を務める。現在、「世界の車窓から」などの担当プロデューサーのかたわら、文化学院で講師も務める。著書に「転がる石はダイヤモンド」(第三文明社)がある。

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